第213話 とある人間の手術の決断!

さて、前の章で見た通り脳細胞は末端の細胞の痛みよりも耳や目の方が重要であると判断していた理由を知りました。


こうして人間の体は自然の老いとは別の形でどんどん退化して弱っていきました。

ついに脳まで痛みが達したとき、多数の細胞は自分達の生命の危機を悟ることになりました。


そして、耳と目、そして脳の一部に侵食していた寄生虫を駆逐すべきであるという意見で一致しました。


この時点で寄生虫側も危機感を持っていました。

彼らは体の末端ではなく、耳や目や脳の重要拠点に侵入して体全体を掌握しようと必死になっていました。


この時、寄生虫を排除するという選択肢は確かにあったのですがなかなか実現しませんでした。

脳がそれを拒んでいたからです。


脳の判断では耳や目や脳の手術をするのは痛みを伴い怖いので避けたかったのです。

そして、逃げの口実として、「耳や目は大切だ、どうして耳を切り目をえぐることが出来ようか」と叫びます。


一見正論と思う細胞たちも多かったのですが事実は違いました。

寄生虫側の最終目的は脳を乗っ取り体全体を支配することであり、そこから先は何も考えていませんでした。


それが寄生虫の本能であり、彼らと細胞たちが相容れない強力な理由でした。

つまるところ彼らに身を委ねることは将来の人間の全細胞の死につながる悲劇だったのです。


彼らは耳や目と同化することで今まで聖域に守られる状態のように安全をむさぼり、心ある細胞たちは悔しさをにじませながら見ていました。


時にはガス抜きのため、彼らは都合に応じて一時的におとなしくなったこともありましたが、今はもう時間がありません。


なりふり構わず彼らは目と耳、脳に侵攻して体内に悪影響を及ぼしていました。

具体的には体が動かなくなるように神経を犯していったのです。

さて、手術が出来る体力的、技術的な限界はもうすぐです。


手も、足も、末端の指も、内臓も、体の隅々までもはや無関係という訳にはいきません。


それぞれの部署が出来ることをすべき時が今なのです。

検査などと悠長なことを言っている場合ではありません。

すぐに寄生虫を取り除く手術をして、体を健康な状態に戻しましょう。


頭のてっぺんから足の指先まで、正しく明るい風景を見ることと正しい爽やかな音が聞こえることによって、好きなところに走っていけるようにしましょう。

そうすれば、体は健康に元気になり、きっと若返るにちがいありません。


特に脂肪として普段さぼっているそこの私、こんな時こそエネルギーを燃焼して働かないと、無駄とさげすまれて数十年、晴れの舞台がすぐそこにある。

俺たちの戦いはこれからだ!


というところで夢からさめました。

長くなりましたがこれで現代の情勢とはまるで関係のない夢の中の寓話を終わります。


前よりさらに難解といいますか意味不明でしたがいかがだったでしょうか。

もし、「ああ、そういうことか!!!」と一人でも思ってくださったなら作者的には大満足です!

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