第73話 軍師コウメイ、ネットでの工夫
軍師コウメイ、彼はネットで自分に起きたことを拡散していました。
ただしデンゲル人という言葉は使いませんでした。
それは差別用語であり、ネットで弾かれていたからです。
「言論の自由が聞いてあきれる」彼は吐き捨てるように言いました。
それでも彼は自分の経験を話すことで自分がだれを対象にしているのか理解してもらえると確信していました。
やがて、彼と同じように被害にあったという報告をあらわす人がひとり、また一人と増えていきました。
ある人はひだまりの国の人間であるという理由で過去の歴史について罵詈雑言を子供が浴びせられたと訴えました。
また、ある人は自分たちは好き勝手に暴言を吐いているのに同じことを言い返すと敗戦国の罪人のくせに生意気だといわれ、暴力も振るわれました。
また、ある人は普通に交際を始めたにも関わらず後から暴行されたと訴えられ、賠償金と名誉と仕事を失ったことを告白しました。
どれもこれもひどい話です。
しかしコウメイは彼らに決して主語にNGワードを入れないように忠告しました。
NGワードを入れればネットからブロックされてしまうことを知っていたからです。それと同時に主語を入れなくてもそれがどのような存在が行ったことか、日頃の行いで多くの人々は理解できると信じていました。
こうした運動が功を奏して、ひだまりのひとびとは多くの注意喚起を促し、それによって被害がわずかですが少なくなるようになりました。もちろんコウメイはこれで終わらすつもりはありません。
彼は隣の大国こめこめ連合国で新しい大統領が生まれたことに注目していました。
彼の前評判はさんざんなもので、とくにテレビや新聞などのオールドメディアではぼろくそにたたかれていました。
ですがいざ選挙になると僅差で大統領となったのです。大きな要因はオールドメディアの信用失墜、つまり彼らの主張の逆に選挙民は投票に向かったのです。
同じことがこのひだまりの国でも起きるはずだ。彼は期待していました。
ただしこめこめとひだまりでは国民性が違います。
こめこめ連合国は国民意識が強く愛国心が強い国民が多いのに対して、ひだまりの国は戦争により国土の荒廃のためか愛国心がタブーとなる傾向がありました。
しかも長年デンゲル人のメデイア工作により愛国心を卑下するプロパガンダを徹底的に行われていたので再建は困難でした。
彼はもう一つの工夫として、多少の意見の違いは大目に見て愛国心や愛郷心といった旗のもとに多くの人が集まるよう努力しました。
声が大きい人はつい自分の正義を他人に押し付ける傾向がありますが、声が大きいとこめこめ国のオールドメディアのようにかえって人心が離れていってしまうこともあります。
そうならないように包み込むような言葉を使うよう気を遣うのでした。さらに彼はひだまりの民にとある行動を促します。その行動については次章で明らかにします。
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