第9話 ルイーナと街歩きデート①
晴れて恋人同士となった私とルイーナ。
うん。めちゃくちゃ嬉しい。嬉しいんだけど――
「恋人同士ってなにすればいいのかな?」
ルイーナと一緒のベッドの中で私はひとりごちる。
勢いで体の関係にまで発展しちゃったけど、別にエッチをすることだけが恋人の特権じゃないよね。それだけならただのセ〇レでいいわけだし。
私がイメージする恋人同士はこう、うまく言葉にはできないけどもっとロマンティックなものだ。
手をつないで相手のぬくもりを感じて、一緒に笑って楽しい時を過ごす。そんなかけがえのない関係性……。
改めて私はルイーナの寝顔を見る。あどけない表情でむにゃむにゃと口元を動かす様は見ていてほほえましい。
「ま、焦ることはないか。時間はたっぷりあるわけだし」
ルイーナの頭を一撫でし、私は眠りについたのだった。
☆☆☆
――翌朝。
「フフ。昨夜はおたのしみだったようだね」
「「っ!?」」
開口一番クロさんはそう言い放ち、ルイーナの顔が真っ赤に染まる。私も頬が熱い。
「どどど、どうして……?」
「どうしてわかったかって? そんなのアンタたちの様子を見れば一目瞭然だよ。手をつないで、まー甘っあまな雰囲気を出してからに。と茶化すのはここまでにしておこうか。ふたりともおめでとさん」
クロさんはにかっと笑うと私たちの頭をクシャリと撫でた。こそばゆいけど悪い気はしない。ただちょっと気になることがある。
「あの、クロさん的に私がルイーナの相手でよかったんですか?」
クロさんからしてみれば居候が娘に手を出した形になるわけだし。
「なにバカなことを言ってんだい。アタシは最初に言ったろ。ナギはもはやアタシの娘も同然だって。アタシの大好きなふたりが結ばれてアタシは最高に幸せだよ」
「クロさん……」
本当にこの人は……私の真の親どもにクロさんの爪の垢を煎じて飲ませたいよ。
「さて、立ち話もなんだし続きは朝食を食べながらにしようか。フフフフフ」
「父さん、笑い方が怖いんだけど」
「なーに。アタシも父になったとはいえ女であることには変わりないからねぇ。恋バナは大好物なんだよ。それに若いふたりがどんなエッチをするのか気になるし」
「父さん!」
クロさんは最高の親ではあるんだけど、たまにエロ親父化するのが玉に瑕だな。
え、おまえも人のこと言えないだろって? はて、なんのことやら。
☆☆☆
朝食を食べ終え、私とルイーナは今日の予定を話し合う。
「ねえナギちゃん。せっかく恋人同士になったんだしデートしようよ」
「いいね」
ちなみに今日は祝日なので一日中デートすることに支障はない。
「どこ行こっか?」
「んー。適当にブラブラ歩いて目についたところに行くっていうのはどう?」
「それでいこう!」
というわけでルイーナと一緒にリルスの街を探索することに。
私たちが最初に立ち寄ったのは『アリステル』という名前の服屋さん。
「ここはわたしの行きつけの店なんだー」
「てことはルイーナのその服装一式はここで買ったものなの?」
「うん」
ルイーナはいつも三角帽子に黒のマントという魔法少女の格好をしている。魔法少女という概念がないこの世界で、どこにその服が売ってるんだろうといつも疑問に思ってたけど、まさかこんな身近にあったとは……。
「いらっしゃい」
私たちを出迎えたのは男装の麗人だった。
「おや、ルイーナじゃないか。隣にいるのは最近噂になっている黒髪の女の子かな」
噂になってるって私どんな噂されてるんだ?
「アリステルさんこんにちはー。紹介するね。この子はナギちゃん。わたしの大事な人だよ」
大事な人。嬉しいこと言ってくれるなぁ。おっといけない、私もあいさつしないと。
「はじめまして、ナギといいます」
「ナギだね。覚えたよ。それにしてもさっきの言い回し…ルイーナ、いつの間にこんな美人さんをゲットしてたのか。うらやましい限りだよ」
「フフフ。いいでしょー。アリステルさんには絶対に渡さないからね」
「それは大丈夫。どんなにタイプでも私は人の彼女を寝取るような真似なんかしないさ」
ふたりとも顔を寄せ合ってなんの話をしてるんだろう。というかふたりの距離感が近すぎる気が。
私は思わずルイーナを後ろから自分の方へ引き寄せ抱きしめた。
「な、ナギちゃん?」
「おー。ルイーナ愛されてるじゃん。ナギ、心配しなくても私とルイーナはただの冒険者仲間だよ」
「冒険者仲間?」
「そ。私はメインはこっちだけど冒険者も兼業しているのさ」
「ちなみにアリステルさんはAランク冒険者だよ」
Aランク!? それはすごい。
話を聞くと、アリステルさんの
「あ、冒険者ランクといえばずっと気になってたんだけど、ルイーナはどのランクなの?」
「「え?」」
あれ、もしかして聞いちゃまずかった?
「あー。そういえば言ってなかったな」とルイーナが納得している一方で、アリステルさんは疑念の表情を崩さない。
やがてアリステルさんは私にこう問いかけた。
「ナギはもしかしてこの国出身じゃない?」
「は、はい。遠いところからきました」
異世界からやってきたんだから間違いではない。
「だよね。ルイーナはこの国――リヒト王国では有名人だから」
「そうなんですか?」
「うん。最年少で最高峰の魔法学院を首席卒業し、それからたった3年で最高ランクのSランクにまで上り詰めた天才魔法使い。全属性の魔法を高レベルで扱えることからついた二つ名が【万能の魔女】。少なくともこの国でルイーナのことを知らない人はいないと断言できるよ」
どうやら私の恋人はとてつもなくすごい人だったようです。
異世界でハーレム女王目指します! ユリシーズ @kakumatsu
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