第4話 鳴門の早瀬
島に揚がった時は、
「やっぱり、海はいいよな。波もなく、静かな海は心が和む。
「今日は、あの向こう岸の陸地に上陸してみましょう。日が頭上に昇る前には上陸できるでしよう。」
「エイサ、ホイサ。エイサ、ホイサ。」
いつもの五人組は、久々に
先頭の
「左方より潮が強くなった、これに取られてはならないぞ、
「待て、
「あれは
「おお、あれがイルカであるか。」
「それよりも、ここは潮の流れが強い。流れに逆らってあのイルカを追ってみたいところではありますが、イルカが嫌っているのは、あの右手先に見える渦潮でしょう。どんどん大きくなっている。イルカに見習って、ここは、潮の流れから離れましょう。」
しばらく漕ぐと渦潮から遠ざかり、再び、静かな海原に戻った。だが、対岸との間には、かなり速い潮が流れている。
「あの潮の流れを越えないと、向こう岸にはたどり着けまい。
「イルカは、
「「われについてくるように。案内いたしましょう」と言っておる。」
イルカが向かった先には、小さな島があったが、島影に入ると潮の流れは静かにおさまった。
「さすがに海の生き物、潮の道をよく知っているな。
だが、船を降りて丘の上に昇った一行が見たものは、海から見た景色とは全く違う、
櫛彦は、「聞いた話しとは違う。恐ろしき楽園とはこのことか。」と心に思ったが、冷静に振る舞った。
「日も上がった。次に来る時は、もっと大勢の水主衆をつれてこよう。この地は、良いところじゃ。この地の神々に、近々、再び訪れることを約束しよう。木の柱を立て、あめつちの
すると、どうしたことであろう、
「
「ここは、
「心配を掛けました、もう大丈夫です。この地は大いなる地、恵みの地であります。改めて参ることにいたしましょう。あめつちの
「まだ日は高い。帰りしなには、早瀬の潮をよく目に焼き付けてまいろう。
先ほどの
海峡の真ん中に来た頃であった。それまで雲一つない晴れわたった静かな海は、にわかに景色が変わり始めた。みるみる雲が厚くなり、風が吹き込んで波が立った。
「雨が降って来るぞ。
「船は、いささか西に流されております。」
「さあ、いくぞぉ。元気を出せぇ。
残りの四人も続いて声を出し、
「こぎてはそろいて、ひぃ、ふぅ、みぃ。もいちどそろいて、ひぃ、ふぅ、みぃ。みっつそろいて、ひぃ、ふぅ、みぃ。」
「こぎてはそろいて、ひぃ、ふぅ、みぃ。もいちどそろいて、ひぃ、ふぅ、みぃ。みっつそろいて、ひぃ、ふぅ、みぃ。」
五人組は、かけ声とともに息が合い、熱気を帯びてきた。
その時である。海が震え、
「なんだ」
しかも、
「漕ぎ方やめぇい」
「
縄の先に木の棒が巻き付けてあり、
再び、海が震えた。今度は大波が船を
「みな、無事か。曾真利よ、大丈夫か。」
「
「漕ぎてはそろいて、ひぃ、ふぅ、みぃ。もいちど、そろいて、ひぃ、ふぅ、みぃ。みっつそろいて、ひぃ、ふぅ、みぃ。」
なんと、目の前に、巨大なクジラの姿が現われ、海面から飛び上がった。ざんぶりと、大波を
海に潜ったクジラは、再び、姿を現し、大きく潮を吹いた。小船は、大海に浮いた木の葉の様にゆれ、潮に流されると、岬の先に押しやられてしまった。
しかも、そこには、大クジラをも飲み込む巨大な
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