怖い話18【魚捕り網カゴ】400字以内

雨間一晴

魚捕り網カゴ

「だめよ、もう私、結婚したんだから」


「分かってるって、もう来ないよ。それにしても田舎の漁村に嫁ぐとはな」


 不倫していた彼と、そう話したのは三日前の事だ。


「お義母さん、この魚と蟹の、みそ汁美味しいですね!」


「都会から来たばかりのあなたには、衝撃でしょうね。そうだ、明かるい内にカゴを見に行きましょう、あなたにも覚えてもらわないと」


「カゴですか?」


「家の裏手が、すぐ漁港でしょう。そこに魚を捕るためのカゴを置いておくのよ、その中に餌を入れておくだけで簡単なのよ」


 義母に連れられて、引き揚げられた黒くて四角い網カゴの中に、ゆらゆらと大量の黒い海藻が入っていた、黒いボーリング玉のような海藻の周りに魚や蟹が数匹、地上で呼吸出来ずに暴れている。


「その黒い海藻が餌ですか?」


「ふふ、そうよ。分からない?」


 ゴロンと海藻の玉が横を向き、私と目が合った。不倫していた彼の頭だった。


「あなた、次やったら、こうなるからね」

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怖い話18【魚捕り網カゴ】400字以内 雨間一晴 @AmemaHitoharu

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