第2話



許さないのは sgi



『はー、気持ちよかった、』

「あ、駿貴遅い〜」

『え、あ、うん、ごめん、』



急に名前なんて呼ばないでくれ。心臓に悪い。



『どしたの』

「嫌なこと続きだからちょっと人に甘えたいな、って」

『そっか、ほら、おいで』



彼女から来るなんて珍しい、なんて思いつつソファに腰を掛け、両手を広げる。そして彼女が自分の胸に収まり、良い匂いが俺を包む。



「駿貴良い匂い…」

『お前の方がいい匂いだよ、』

「お互いお風呂入ったからだよねきっと笑」

『かもな』

「…少しだけ、このまま居てもいい、?」

『好きなだけどうぞ』



余裕あるような発言に聞こえるが、俺の鼓動の速さは加速する一方で。



「ねえ駿貴、」

『んー?』

「眠くなってきちゃった、」

『いいよ、このまま寝ても』



だって、お前のこと離したくないもん、なんて言えないけど、せめてもの我儘を聞く兄でいたい。


数分するとすやすやと寝息が聞こえる。

流石にここだと2人して風邪を引くので寝室へ向かう。


明日も俺は仕事だ。名残惜しい気もするが、彼女を離して明日の準備をして寝なくては。でも、彼女のあどけなさの残る寝顔がそうはさせてくれない。



「…おやすみ、」



そう一言呟いて、彼女から離れようとする。

すると彼女の手は俺の手を弱々しく掴んだ。



「…え、?」

『いっちゃやだ、』

「…、」

『隣で寝て、よ』



こいつは寝ぼけてるのか?起きてるのか?何なんだよ。隣で寝て、なんてそんな殺し文句。俺の気も知らないで。答えはもちろんいいよ、なんだけど。



「寂しいからってそれ色んな男に言っちゃダメだからね?兄だから我儘聞くけど、俺だって何するかわかんないんだよ?」



すると、目を擦りながら彼女が口を開く。



『…何で気付いてくれないの、駿貴だから言ってるんだよ、他の男なんて、興味ない、もん、、』



…今なんて?俺だから言ってる?他の男には興味ない?



『…ずっと前から駿貴しか見てないのに、何で気付いてくれないの。割と大胆なことしてたのに、』

「まって」

『…なに、』

「お前俺のこと好きだったの、?」

『何年も前からそうだよ、』



眠気の冷めた彼女は俺の質問にちゃんと答える。



『…でも、駿貴だって別の人と付き合いたいよね、うん、ごめん、妹がめっちゃ我儘で…』



自分を蔑む彼女が気に入らなくて、衝動的に口付けをする。



『んっ……、しゅん、き、?』

「俺もずっと前から好きだった、」

『…え、?それほんと、?』

「嘘ついてどうするの、俺だって他の女興味ない」

『両片思いだったんだね、』

「だね、」



何だ。彼女も俺のこと好きだったんだ。

内心すごくホッとしてる。



「明日仕事?」

『んーん、休みになった』

「両親帰ってくるのいつだっけ?」

『明後日だよ』

「じゃあ好きなようにしていいよね、良い、?」

『…めちゃくちゃにしていいよ、』



愛しの人にめちゃくちゃにしていいよ、なんて言われたらもう俺の理性なんてものは存在しなくて。



「いただきます」



その言葉を合図に甘ったるい時間を過ごす。




はずだったのに。





ガチャ____




玄関から両親の"ただいま"なんて呑気な声が聞こえる。



「…?!」

『ちょ、やばい、』



即座に自分の部屋にそれぞれ逃げた。


なんだよ、タイミングが悪すぎる。あと少しで触れられるところだったのに。


すると母が訪ねてきた。



「駿貴、ご飯大丈夫だった?」

「うん」

「そっか、良かった」

「でもなんでこんな早く帰ってきたの?」

「観光予定だったところで事故が起きちゃって、入れなくなったから早めに帰れたのよ」

「ふーん、そっか。明日も俺は仕事だから寝るよ、おやすみ」

「おやすみ〜」






___兄妹間の恋愛はタイミングが許さないようだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

許さないのは n. @black__sweet__

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ