第39話 22日目

 これまでのことをパズル解きで整理していたら、日を跨ぎこした。

 メルスのお腹の音がぐーきゅるると鳴り続けている。

 ――すごい眠りっぷり?

 寝息は可愛いものだ、微笑ましくなる。

 ぱた。

 ?なんの音だ。

 かたかたかた。

 気まぐれで床を見たら、次々にグラデーションで床が抜けている。

 おいおいおい!

 メルスの足元にも迫り、危ない!と思った瞬間に、椅子ごと暗闇に浮いている。

 まるでそこに見えない床があるように。

 宙に浮いて見える。

 抜けていくのはノンストップで進行し、あっという間に黒い空間が占めていく。

 メルス以外は。

 世界の外はこんなものかもしれない。

 考えられる限りのことを試してみたがメリスはうんともすんともせず、そのままの姿勢を保ったまま、時間が止まったかのように動かない。

 何も聞こえてこない。

 黒がすべてを吸い取ってしまったかのようだ。

 このままなのか?

 何もできないのか?

 焦りつつ、時間だけが過ぎてゆく。

 感覚を研ぎ澄まし、周囲を探ることしばし。

 感覚としては、すぐなのかもしれないし、何時間も経っていたのかもしれない。

 点だ。

 明かりではないかと気が付くまでに、ややかかった。

 離れてあるその明かりは、炎だ。

 下の方で燃えているので、さながら焚き火だ。

 そこでふと思い当たった。

 以前見た、洞窟だ。

 とすると、メルスが見つめていたものと、同じなのか。

 なにかしらで、つながった?

 邪悪さは感じ取れない。

 どちらかというと温かみがある。

 爆ぜた音がたったひとつ、響き渡った。

 ばっ!

 メルスが叩き起こされたかのように、しゃっきり目覚める。

 すぐさまぼーとしている。

 おい、メルス!

 大きすぎないよう、だけど伝わる声量で声がけする。

 ……。

 おーい。

 遠くにあるはずの明かり、焚き火をぼんやりとみているようにも見える。

「美味しそう」

 ?

 メルスには、何が見えているんだ?

「疲れた〜」

 独り言か?

「ソム、ここどこ?」

 ここまでが長かったよ。

 メルスは見覚えがないか?何か思い出さないか?

 うーーん、限界まで頭を絞り出してくれている。

 わかったわかった、ムリはするな。

 こわくないか?

「こわいっていうより、落ち着いてる感じ。緩やかに静まっている」

 そうか、よかった。

 どこか異常は無いか?気分が悪いとか。

「ソムとはつながってないの?」

 あっ、そうか。

 ……ムムム?

 どうやらつながりは制限されているらしく、テレパシーのみがようやくだ。

「ごっくんだね」

 たまに君がわからない。

 調べたんだが、いいか?

 袋をポンポンするとおー、と腕を振り上げて明かりに向かって歩き出していた。

 ぽたん。

 ぽたん。

 落ちるのと、どこかでちょろちょろと水の音がする。

 足元に注意。

 おっけー。

 抜き足。差し足。

 慎重すぎだ、ゆっくり、ゆったりとだ!

 しずしずしゃなりと貴族の歩み。

 ……まあそれでいい。

 メルスは上のメルスとなったのではなかったのか?

 天然か(笑)?

 永遠の謎はとりあえず置いておくとして、保護者の感覚でメルスの一挙一動を見守った。

 気楽なお散歩でもしているみたく、暗闇の中を、明かりに近づいていく。

 こおぉぉぉと、風が通り抜けた。

 すぅ……と突き抜け、すん、とわかだまる。

 地上か外に通じているのか。

 足音は地面?に吸い込まれている。

 着いた。

 焚き火がパチパチ爆ぜている。

 どうするんだ?前と同じことをするのか?

 メルス、焚火の前に立つ。

 大きく息を吸い込んだ。

 ん?まさか……。

 わーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!

 反射しまくって、響き渡るどころではない、が鳴り渡っていた。

 さらさらと天井の一部が粉となって降ってきたほどだ。

 ほとんどが暗いのでイメージなのだが。

 焚き火が大きく揺れた。

 認識も揺らいだ。

 サーっと暗闇が剥がれ、剥き出しの岩肌が顕になる。

 天然と人口の中間物のような洞窟的迷宮だ。

 石肌感覚で自分の経験に照らし合わせて読み取れた。

 グッジョブ、と言いたいところだがリスクも犯している。

 それでもここはメルスを褒めるべきなのだろう。

 メルスも、俺も、待ち構えている。

 来た道を戻ったところで解決になるかだが、すぐに動けるようにはしといたほうがいい。

 進んで焚き火から燃えさしを数本取り、即席の松明とした。

 ぐるっと見渡すと、道が二手に分かれている。

 メルス、地面だ。

 どちらもに薄く足跡があったが、左手は戻ってきた後もある。

 右だな。

 メルスは腰のナイフを確認すると、急がず、確認する足取りで前へと進む。

 まて、メルス。もう一本、長いのを取ってきてくれないか?

 言われた通り、ひょろ長いのを焚き火から取り出す。

 火を消してくれ。

 勢いよくぐるぐるぶんぶんする。火は消える。

 確かめ棒だ。

 !安全に、先の危険を確かめる。

 そうだ、昔、ダンジョン潜りのヤツから聞かされてな。

 まあ多少耐久性に難がありそうだが、あそこで長く耐えて燃えていた木枝だ、ちゃんと一役こなしてくれるはずだ。

 今一度、自分の装備を確かめ、しっかり現状把握を怠らず。

 俺たちは、意識をイメージの冒険者に切り替えつつ、右奥へと向かう。

 22日目、続くぞ。

 

 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る