第31話 18日目続きの続き
なんという展望、開けかただろう。
いままでは点だった。
それが一挙に面になった、いやさもう世界を捉えているかのような錯覚に陥る。
御伽噺には摩訶不思議な馬、魔法の馬が登場したりする。
千里をかけたり、宙を駆ったり、勇気を与えてくれたりする相棒。
正直、そんなすごいことは起こっていない。
気持ち早めに、駆けてくれている、ただそれだけ。
……たぶん、加わってくれた。
新しい仲間として。
それが、こんなにも感情に絶大に与えてくれるなんて。
関係性というスキルがなければ、この場でつくってしまいたい。
それほどの正の衝撃はこれまで体験したことがなかった。
メルスも思うところがあったのだろう。
くもがのんびりくつろいでおちつくね。
かぜのうたがすずしげ。
まぎれているようで、そっとじぶんはどこまでもきえつづけない。
とおくのやまはいてくれてあんしん。
ちかくのきぎはあいさつしてくれてきぶんいい。
じめんはさっきからゆるしてくれていてすまないかな。
……どれもがきえた。
頭を軽く振って、うーん、おもいこみ?とずっとずーと考え込んでいる。
見え方が、認識がそうなのかもしれない。
けれども世界の方が様々な層があるかも知れないわけで。
これは哲学だ。
とりあえず、馬くん、君のことは哲学馬と呼んでおく。
ただの名前だ。
深い枝伸ばしをするつもりはない。
名誉勲章と思ってくれたまえ。
馬はただ走る、かける。
次々飛び込んでくる景色の切れ端は思い浮かべている世界図と照らし合わされている。
上から見ていて、地の面を歩みゆく、風のように自由さもあり、新鮮だった。
ふと、野の花が目に焼きついた。
どうってことはないが、ここにいるよ、という訪れがやってきて、そこに、いた。
崖の突端、そこからずうっとずうっとどこまでも見渡せる。
自然や緑、山々、街や王国までありそうだった。
右手には海なのだろう、ここまで音音が運ばれてくる気がする。
いわば、世界だ。
これもそうした一面だ。
メルスはほえーと感激もしている。
もともとは何かと受け取る娘なのだ、別の彼方を見通しているのだろう。
それをみられるならみてみたい気もする。
……!
べ、別にメルスのことが気にかかっているだけで特にやましい気は――
あるのかもしれない。
好みになってから、その気は起きないが、意識をつくっているものに含まれているような感覚があるぞ。むしろ、それも無いといけない気もしてきた。
おそらく仙人、超人にはなれないのだ、人間は。
どこまで行っても人間だし、変わりようがない。
よしんば、そのような状態になったとしても。
人間だという認識は持ち続けた方がいい。
さもないと、どこかで落とし穴が待ち構えているのだろう。
何か、錨となるもの、主なる軸のようなものは必要だろうか。
メルスがいる。
それではダメだろうか。
共依存、ではないと思う。
少なくとも俺はパートナー、ぐらいには意識している。
人生の伴侶かどうかはわからないのだが。
そうすることは一方的な押し付けがあるような気がするのだ。
メルスも悪く思ってないらしい。
でもそれは、人生経験がほとんどないからで、あまりフェアじゃない。
俺の中で父親と男が立ち上り始めている。
形をとってしっかりするまで時間がかかるだろう。
それまでは仲間、ぐらいの捉えでいたい。
ズルでも卑怯でもないぞ💦
ただ、この関係性は絶妙な天秤で維持されているっぽいからだ。
風が気持ち良い。
とにかくそういうこと!
18日目はなおも続く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます