第12話 10日目
まな板の上でぴちぴち跳ねてます。
生きがいいです。
腹をかっさばいて、はらわたを…おおう、うまいな…で意識に闇のカーテンが降りる。
目覚めると、おっさんのスリング袋の雑兵のひとつになってました。
俺、スリングの弾扱い?
ま、いいや。このおっさんの日常を覗いてやれ。
若干遅めの昼近くに起床。うわっ、しまらねえ肢体だなぁ。ゾンビのようにのろのろと歩き、カバのように近くの川で行水すると、ブヒッと下品な放屁を一発かます。戻って早々、食卓で酒をあおり出す。呑めるだけ呑んでそのままぐーすか爆睡モード。と思ったら、やおらたち起きて、よだれをだらだら垂らしながら俺を置いて外へ出ていきやがった。世間様と顔を合わせて大丈夫なのか?とひとりでやきもきし、うつらうつらし始めてきた頃、何やらたくさんのもの?を調達して帰ってきた。どさどさ床に無造作に落とす。どれどれ…子犬、ネコ、少女、サキュバス、大根、リリー、光の球?!んだよ、これ?何を、よりもどうやって集めてきた?等、疑問符だらけだ。そう混乱しているうちにおっさんは床に魔法陣を描き終える。肩をほぐし、ぼきぼき指を鳴らし、「いっちょ、やりますか」気楽に言ってのけた。
手を使い、まるで粘土細工でもするみたいに、くっつけ、混ぜ合わせ、伸ばし、捏ねて、かたちを整え、細かく、細かく、性的な嬌声が上がり、うにょうにょみょよよんと、みちみち音がして、すがたかたちが定まりだして…145歳ぐらいの女の子が出来上がる。もとの少女とはダンチで出来が違う。おっさんは汗まみれだ。「ふう。一仕事、一仕事」川の方へ向かっていった。残された女の子とはいえば、よだれを垂らし、焦点の定まらぬ瞳で宙をさまよっていたが、不意に、俺と目が合った、気がした、というのも、俺の方を見ている。
…
タスケテ…
テレパシーで訴えかけてきた。
!俺が…分かるのか?
ウン。アナタ、イキテル。ワタシ、ワカル。モウハズレテイルカラ…オナジ?
助けてやりたところだが…俺は動けないぞ
ワタシ、アタマヨクナイ。オシエテ?
俺は考えた。時間はない。相手は創造してしまうようなとんでもない奴だ。この娘は非力で、立ち回りもうまくはできないだろう。どうする、どうする。どうしたらいい?こんな時はまず、問いを立てることから始める。なぜ、こいつはつくるんだ?必要だからだ。なぜ?自分ではできないことをさせる。奴隷?そんなところだろう。なぜ自分ではできない?面倒くさい。何もしたくないから。そんなことでわざわざつくるか?そういえば、あいつは仕事、と言っていた。ここは重要だ。仕事としてまでつくる理由はなんだ?むしろあいつはどうやった?…!そうか。つくるから必要なんだ。単純に、つくる=必要だ。ならば、あとは。
やってほしいことがある。できるな?
ヤッテミル。オシエテ?
教えるが、ただ言われるままはダメだ。わかるか?ジブンノ、チカラ、ツカウ。デキル?
ヤル。
決まったな。難しくない、ただ、手を見せてと言うんだ。そして…おっさんの手のひらと手のひらを合わせろ。それだけでいい。
テノヒラ、テノヒラ、テノヒラ…
(大丈夫だろうか…来た)
ふうふう、おっさん、戻ってくる。
「さて、さっそく奉仕してもらおうか」
娘、おずおずと。
「手…つなぎたい」
そうかそうかと、おっさんは疑いもせず両手を差し出す。
娘から… 意外な言葉が出た。
「ありがとう…」
すっ、と自然な動きで両手でおっさんの手のひらと手のひらを合わせ、包み込む。
ニコニコ顔のおっさん、不意打ちに言われたせいで最初は何が起こったのかわかってなかった。が、次第に飲み込めてきて、両手を合わせたまま「ああああああああ!」と叫んでいる。ずぶりずぶりと、手が手に入り込んでいく。ぬちゃ、ぐちゃ、めちょ。そのままめちゃくちゃになる。ああーーー
ーーー息をしなくなった。
やっぱりそうか。手が力であり、弱点でもあったわけだ。
女の子はゆっくりと手を離し、あるがままその光景を見つめていた。
複雑なのかなあ。
女の子がこっちをじーと見つめている。
深々と頭を下げ。
「おつかれさまでした」
…?!それでいいのか?
直撃で意識を失う。
10日目終わり。
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