第11話 9日目

 とりたてて無いが、醒めていている面があって、何事かたち起こるのを待ちわびている軽い興奮状態。一抹の寂しさも同居している。こうも同じ游泳が長いとすぐに思索モードになってしまう。ネビュラが諌めてまではいかなくても、きちんと諭してくれていたので、淀みには立ち入らずに済みそうだが、どうしたって立ち止まったり、同じところをぐるぐるしてしまう。先ほどの状態もそうだ。ここはどこら辺だろうか。俺は東の大陸にいた。中程にあるクィラス地方の一都市ザムクードを拠点とする探検家を生業としていて、その前は大陸に名を轟かせる智の学院にて司書を務めていた。どちらも性には合っていたようで、心ゆくまで職能を深めることができた。

 それなりに仕事と冒険と趣味と怠惰をこなし、足りない分は夢や本や話で補ってきたが、総じて小さきことどもが群れをなしていたようで、いつも物足りなさとその度ごとの考えごとに追われていたような気がする。よーするに毎度毎度飢えていたわけだ、とびっきりの出来事の一期一会に。人生を変えてしまうような転機とやらに。そんな波乱万丈、エキサイティングでスリリングは天の采配、配分か、ギャンブルの一発逆転の確率みたいなものだ。身に染みた。もう二度と期待はしまいと。そのまま失意のうちに人生を送るはずだったのだが…2度目の人生はどうやら違うらしい。はじめこそこなくそ、と思ったものだが、ネビュラさん以降はコロリと転回してしまった。まだ何もしていないといえるが、さにあらず、どうやら人間から外れてしまったせいだ、未だ名付けざる展望が開けている。いいぜ、やってやるよ。どこだろうといってやらあ。俺は俺を貫くぜ。

 おっ、ぱくっ。

 ぼしゃああん。

 冴えないおじさんに見事釣られました。

 あれっ?

 9日目終わり。

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