第10話 8日目
水を得た魚とは文字通りこういうことを言うのか。身体の感覚がある。水をその身に受け、流れに従って尾びれを使い、自然と身をくねらせている。俺は魚だ。意識は人間だが。どんな魔法だろう。ネビュラのおかげだろうか。見知らぬ水流を泳ぎ渡っている。視界が開けるというか、全体で周りを認識している。このまま泳いでいればいいのか?そうだな、行けるところまで、行ってみよう。それにしても、なんという視界不良だ。濁り水が淀んでいる。下流だろうか?流れは急流といっていいのでおそらく違うのだろう。喉が渇いた。水はがぼがぼ飲んでいるはずなのに。そうじゃない。人間として、飲み水が欲しくなった。おかしいのだろうか?服を着ていないことにも違和感があった。魚だからといって、心までも魚になる必要はない。そのことの証左だろう。さておき、この旅は快適だがいささか単調だ。見栄えのない景色の中をただすいすい泳いでるだけだからな。早くも青空を懐かしんだ。でもえら呼吸も悪くはないな。考えるように身体を動かす。人間の俺としての心と魚の本能を、行ったりきたりしつつ、ほとほと泳ぎ疲れ果てた頃、しっかりと体内時計が1日が過ぎたことを知らせてきた。8日目終わり。
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