第7話 5日目続き
庵の中は質素さと快適さに適度にエレガントな知性が感じられる佇まいだった。生活用品と本といった知財が程よくブレンドされている。少女は人間ではなかった。龍であろうか、角とまなことキバとふしぶしに特徴が見て取れる。目を引いたのは身体全体に入っている、タトゥーのようないろどりだった。
「ん?珍しいかえ」
あ。ああ。あんたハーフか。
「ハーフか。龍だけじゃと思っとるじゃろう。もっとじゃ。悪魔も入っとるし、ケモノも、エルフとかもじゃ」
…!なんだよそれ。あんた何者だ。
「我が名は星々。言いにくいから、そうさのう、ネビュラとでも名乗っておこうかのう」
聞いたことがねえ。昔話にでも出てくるのか?
「ワシは忘れ去られた、どうでもよい存在よ。あらゆる理を探っているうちに」
ため息をひとつ。
「あらゆる理から愛想をつかされたのじゃ」
…!ここはどこだ?
「そうさのう…ワシは絶界とよんでおる。どこでもない場所、どこの時間にも属さない」
えっ?俺、なんでそんなところに?
「ここはいかなるものも入り込めん。なんでもないものは別じゃがの。おぬしはいま何者でもなく、どうでもよい存在じゃ。呪いも含め、だからここに来れたんじゃろう。それが僥倖かどうかはわからぬが」
話せる相手がいてくれただけでも俺にとっちゃラッキーだ!なあ、これ。この姿、なんとかならないか?
「その姿か。うつつと幻が織り成されて重なりおっとる。少なくともワシが知る理ではなりとっとらんのう。ここより外のものの仕業かも知れん。呪いも実のところよくわからんのじゃ。すまん。ワシではどうにもならん。出来るのはこれくらいじゃ」
俺に手をかざした。暖かい。
「わわ!あんた、何した…って、普通に話せてるのか、おい!」
「テレパシーでも喋れるようにしといたぞ。呪いをいじったのじゃ。これで少しは楽になったじゃろ。さて、な。お前さま、これからどうしたい?何かしたいことはあるかの?」
「そりゃあ早く人間に戻りたいけど…俺には夢があってだな。冒険したい。世界を駆け巡りたいんだ。まだだれも見たことのない景色をこの目で見てみたいよ」
「もう半ば達成しとるじゃろう。ここは誰も見れる地ではありゃあせん」
「…そういやそうだな。そう考えると、この身でも大冒険、できるじゃねえか。そうか…」
「まあいろいろあって今日はもういっぱいいっぱいじゃろ。今日はゆっくりやすむとよかろ。続きはゆっくり…」
最後の言葉は聞き取れなかった。意識が混濁し、眠りの海へとなだれ込んだ。
5日目終わり。
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