第6話 5日目

 比較的静かに5日目は始まった。といいつつ比較するほど新しい人生は長くないが。これまでの全人生が感覚の基底としてあるのだろう。記憶というのはその者を表すのにまっことかくあらざる要素なのだな、とつまらなかったことも含めこれまでの生き方を全肯定したくなった。不意に身体がふわりと持ち上がった。また空中飛行大冒険か?と思いきや、1人の少女が物珍しそうに俺をつまみあげてしげしげ見ているではないか。

「これはこれは人石かえ?」

 ?歳経た老獪とも取れる口ぶり。

 お、俺がわかるのか…?

「ふむ。ワシは賢しき者とも魔なる女とも言われておる。これくらいは造作もない」

 た、助かった〜!

「うーむ。助かった、か。それはどうかのう。なにせワシは今まさに閉じ込められているのだから。おぬし。呪いにかかっておろう。ひかれたのじゃよ、呪い同士、まるで恋い焦がれる恋人たちのようにな」

 なんですとー!

「まあ、ここではなんじゃ。中で話さんか」

 よく見るとここは庭先らしい。菜園や畑やらがここかしこにつくられている。そして目と鼻の先にみすぼらしいが申し分ない庵が居を構えていた。

 少女がにぱっと晴れやかな笑いを浮かべた。

 5日目は続くぞ。

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