第2話 1日目
小石になって1日目。最初に確認したのは、自分がどこまでできるのか、だ。意識はある。俺は俺だと思えている。これは一番大事。ないと始まらん。あってよかった、自意識さん。次にテレパシー。試しにたまたま近づいてきた野鳥に向けて念じてみたが、うんともすんとも言わない。糞を垂れていったよ。俺をなんだと思ってるんだ!あっ、小石だった。どうにもならん…それからあーだこーだとやってみるが、ハイ、俺はただの考える石のようです。ここで何千、何万年と思索を重ねて…いやいや!そんな人生、嫌だから!対話する相手がいない哲学者って、ただの独りよがりじゃん!そうこうしているうちに、風でいくらかコロコロ転がり、突然雨が降ってきて、水たまりにプカプカ浮いていた。うーん。大海に漂っている気分。ゆらり揺られて。ようやく夜になってひとつだけ判明したことは。感じとる感覚というか、視界は、もとの俺並みにあるぞ、ということ、だった。えっ、これだけ?こんなんじゃ何にもできん。石だけあって、食欲も睡眠欲も性欲もないが、興味は失われていない。痛覚はなく、あるのはセンサーと知性のみの、言うなれば小さな小さな観測者、だな。軽く絶望したところで、意識を閉じ、1日目を終える。
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