第三章 きっと世界はきみのもの

第三十三話 真実と狭間

 ——マスター、135番体が、災厄……、計測……、観測……確認。オーガタイプのディザイコルと接触しました……135番体、彼の魂の部屋に繋ぎますか?——


 ……とうとう、その時が来たか……、僕は選択しなければならない。


 僕は少しだけ、間を開けてサブ脳である、ナビに返事を返す。


「ああ、タイミングをみて……頼む」


 ——了解、引き続き観測します——


 彼に全てを託すか、否か……。


 独白しようにも、観客が、誰もいないこの次元の狭間では虚しい。


「だが、僕はずっと待っていた。世界を取り戻せる可能性を秘めた僕を」


 もう、僕の魂も随分……削れて、小さくなった。

 

「長い時間の間、『スレイトラッド』に飛ばした魂のカケラで『神血』を覚醒できたのは……、135番目の彼だけだった」


 暗闇が支配している、この場所でも、腕があれば大仰に天に突き出し、叫んでいただろうが、今の僕には腕がない。


「——決めた」


 ……僕の全てを、彼に、


「託そう」


「……未来を」


「希望を」


「神は……僕にこう、言ったんだ」


「全ての災厄を殺せば……世界を! 全てを元に還すと!」


「だから……僕は……」


 のの葉……。


「ここにいる」


 世界を還す為に。


 ひとりぽっちで——


 「悲しみの果てなんか、とっくに通り過ぎた……」


 真実を硬く握りしめて。


「僕は……世界を取り戻す」




 








 

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