機械仕掛けの淡い恋

ねむりねずみ@まひろ

30分程度の4人台本です。2:2

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『キャラクター』


アリア(不明)♀:機械仕掛の少女 まだ作られたばかりで知らないことが多い

カナタ(24)♂:アリアの創造主 幼い頃に両親を石死病で亡くしている

ミーア(14)♀:カナタの幼なじみ クレールの娘 天真爛漫

クレール(48)♂:石死病研究施設のリーダ。ミーアの父親

Mはモノローグです


石死病(せきしびょう)

medous syndrome (メディウス シンドローム)


『コピペ用キャスト表』


「機械仕掛けの淡い恋」


♀2:♂2

アリア ♀

カナタ ♂

ミーア ♀

クレール♂


以下台本

_____________

―タイトルコール― 「機械仕掛けの淡い恋」


カナタM「世界には未だに知られていない病が沢山ある。 medous

メディウス

 syndrome

シンドローム

通称 石死病

セキシビョウ

これもその中の一つだ」


カナタM「体が徐々に石化し、死に至る病。それが石死病である。…原因は不明。石化のスピードも人によって違う為、色々と仮説が立ってはいるが、明確な治療法もなければ完治する保証もない。」


カナタ「この文献もハズレだ…くそっ。」


カナタM「10年前俺の両親は、石死病で死んだ。感染源は不明。あの時は何も出来ずに、ただ二人が石になっていく様を見ている事しか出来なかった…」


カナタM「両親が亡くなった後、路頭に迷っていた俺は、運良く石死病について研究しているという施設にたどり着いた。それ以来、ありとあらゆる文献を集め、古文書を読み解き、原因を探してはいるが…思うように進まないのが現状だ」




―― カナタが窓辺で物思いに耽っていると 玄関の扉が開き、一人の少女が入ってくる ――


アリア「カナタ、お花のお水変えてきた」


カナタ「ありがとうアリア」


アリア「何読んでるの?」


カナタ「あぁ、石死病についての文献だよ」


アリア「石死病?」


カナタ「そう、体が徐々に石になっていずれは死んでしまう病気」


アリア「死ぬ?」


カナタ「ん~なんて言うかな、起動停止というか…眠るっていうか」


アリア「眠る…」


カナタ「アリアには少し難しいかな」


アリア「大丈夫、わかる。眠る時は子守唄を歌うのでしょう?」


カナタ「そうだね。まあ、ちょっと違う気もするけど…」


アリア「ん?」


カナタ「まあ、それは追々教えるよ」


アリア「わかった。ねえカナタ、喉…渇いた」


カナタ「ああそうだね、お茶にしよう。たしかこの間ミーアが持ってきた紅茶が棚にあったはず…」


―― カナタが窓辺を離れようとした瞬間、勢いよく玄関の扉開き 可愛らしい洋服を着た少女が飛び込んできた ――


ミーア「カーナーター!!会いにきたわよっ!!」


アリア「…ミーア、何しに来たの?」


ミーア「あら、アリアもいたの。別に、貴方に用はないわっ!私はカナタに会いに来たのよ!」


アリア「残念だけど、カナタはこれから私とお茶するの」


ミーア「お茶ですって?!私もまぜなさいっ!」


アリア「いや」


ミーア「何ですってぇ!」


カナタ「2人とも、落ち着いて」


ミーア「いやよっ!」


アリア「…いや」


カナタ「まったくもう…ほらとりあえず2人とも座って」



―― カナタを挟んでにらみ合う2人 見かねたカナタはコホンと咳をし わざとらしくしゃべりだす ――



カナタ「…さて、ここにステラさん直伝のチェリーパイがあります。だけど…喧嘩をする悪い子にはあげられないなぁ。よってこれは、俺一人で食べ…」


ミーア「やぁあああ、だめっ!だめだめだめっ!!もう喧嘩しないから 一人で食べちゃだめぇ!」


アリア「カナタ…私も食べたい」


カナタ「ぷっ…あはははは、いいよ。その代わり…仲直りできるね?」


ミーア「しっ仕方ないから、一時休戦よっ!」


アリア「…わかった」


カナタ「うーん、これは仲直りしたのかな?」



―― 疑問に思いつつも、仲良くケーキを食べ始める3人 ――



ミーア「ん~っ!おいしぃ!さすがカナタのケーキっ!」


アリア「うん、美味しい。甘さも控えめで毎日でも食べたくなる」


カナタ「ハハハ…善処するよ。それより二人とも、紅茶のお代わりはどう?」


ミーア「頂くわっ!」


カナタ「はいミーア、どうぞ」


ミーア「ありがとう、あれ?この小瓶お父様からもらったお薬と同じ…」



―― ふと机に置いてある小さな瓶に興味をしめすミーア ーー



カナタ「あぁ、石死病の予防にって調合してくれたんだよ、ミーアはもう飲んだ?」


ミーア「えぇ、もちろん。一番最初にお父様がくれたわ」


カナタ「そうか、ならよかった。…あれ?ミーア、髪のリボン新しくした?」


ミーア「えぇ!そうなのっ!ファリスが作ってくれたの…でもファリス、いなくなってしまったの」


カナタ「いなくなった?」


ミーア「うん、お父様が言ってた。昨日の夜中、私が寝てる間に引越ししちゃったって…」


カナタ「そっか…寂しくなるね」


ミーア「でも、このリボンがあるもの、どこに居たってファリスとはずっとお友達よ」


カナタ「そっか…。うん、そのリボン似合ってるよ」


ミーア「本当?!実はこのリボンはね、ファリスとお揃いで世界に二つしかないのよっ!」


カナタ「そなんだ、じゃぁ宝物だね。」


ミーア「えぇ、宝物!お父様にだって秘密にしてるんだから」


アリア「…宝物」


カナタ「…アリア、どうしたの?」


アリア「なんでもない」


カナタ「アリア?」


ミーア「……」


カナタ「いったいどうしたんだろう?」



―― ミーアの宝物という言葉に少し悲しそうにするアリア。自分でもその感情が何なのかわからないようだ ――


ミーア「アリア!そんな顔してたらカナタが心配するじゃない!」


アリア「……」


ミーア「もう!しょうがないわね!…ファリスとお揃いのリボンはあげられないから、こっちのリボンで我慢しなさい!」



―― ミーアは首につけていたリボンを取ると、アリアの髪にまいてやった。戸惑いながらもどこかうれしそうなアリア ――



アリア「……ぁ」


カナタ「アリア…そういう時は ありがとう って言うんだ」


アリア「ありがとう?」


カナタ「そう、嬉しかったり楽しかったりしたら、そう言ってごらん」


アリア「ミーア……ありが…とう」


ミーア「どういたしまして!」


アリア「…はぁ、なんだかポカポカする」


カナタ「ふふ、暖かい?」



アリア「うん…嫌いじゃない」


カナタ「…アリアらしい。あ、そういえば、ミーアはどうして此処に?」


ミーア「あ、そうだった。お父様がカナタに話があるから、研究所まできて欲しいんですって!」


カナ「クレール卿が?」


ミーア「そうっ!なんか、石死病の治療法がどーのって」


カナタ「なんだって!?」


カナタM「石死病の治療法?まさか…本当にそんな事が…。もし本当だとしたら一体…どんな…」



―― クレールの研究所

村から少し離れた所にある研究室。概観は石で作られており、昔からある古城の一部だったらしく あちこちに色々な仕掛けがある。ミーアは研究室の扉を開いた ――



ミーア「お父様ーっ!カナタ連れてきたよー」


クレール「…やぁ、元気だったかい?」



カナタ「こんにちは、クレール卿」


アリア「こんにちは」


カナタ「あの、石死病の治療法が解ったっていうのは…」


クレール「ああ。……。…ここではなんだ、中に入りたまえ」


ミーア「お父様?」


クレール「ミーア、少し外で遊んでいなさい」


ミーア「…うん」


カナタ「アリア、ミーアと一緒にいてあげて」


アリア「わかった、行きましょうミーア」


ミーア「むー。しょうがないから遊んであげるわ!他の皆も引っ越しちゃって 遊び相手がいなかったの

よ」



―― クレールに言われるがまま、庭に行くミーアとアリア カナタは応接室に通された ――



カナタ「失礼します」


クレール「何にもない所だけど…まぁ座って」


カナタ「…ありがとうございます」


クレール「君はコーヒーと紅茶どちらがいいかね」


カナタ「では、紅茶で」


クレール「確か砂糖は2つだったかな…」


カナタ「はい、ありがとうございます…。それでさっきの話なんですが」


クレール「うむ、結論から言おう。治療法がみつかった。だが、この治療法では限られた者にしか効力がない」


カナタ「限られた者って…どういう事ですか?」


クレール「まず、石死病が発病するまでの時間だが、感染した場合、ほぼ3日以内に発症する。しかしある特定の条件下で感染した場合、発症までの時間は飛躍的に短くなり2時間以内に発症する事が解った」


カナタ「なっ…」


クレール「そして、発症してから石化までの時間は、感染状況に関わらず 体の小さい子供の方が早い事も解った。これはやはり肉体を徐々に石化させるからだと言えよう」


カナタ「なんで、そんなことが解ったんですか?!」

クレール「研究とは結果が全て。経緯などは必要ないだろう?」


カナタ「そんな…。どの文献にも古文書にも載ってなかったんですよ?そこまでの細かなデータ、なぜ解ったんですか?」


クレール「……こちらに来たまえ」



―― クレールが応接間の本棚の本を一冊引き抜いた。すると、本棚が移動し 扉が現れる。扉を開けると 診察室なのだろうか、その薄暗い部屋はむせ返る様な鉄の匂いと、湿気を帯びた空気に満ちている ――




カナタM「ここは、隠し部屋??うっ…何だこの匂い…鉄が腐ったような……酷い匂いだ」


クレール「大丈夫かい?」


カナタ「はい…なんとか」


クレール「……あれだ」


カナタ「ん?…モルモットですか?」



―― カナタの目線の先には、ゲージのなかで動き回るモルモットがいた ――



クレール「あぁ。そうだ モルモットを媒体にし、石死病の研究を続けた。これが結果に繋がる経緯だ。さ、あちらへ戻ろう」


カナタM「こんな小さなモルモットだけで、こんなに臭うモノなのか?…うわ、特にこっちは酷い臭いだ……ん?」


カナタ「この箱が一番酷いな…うっ…重い。いったい何が入ってるんだ?」


クレール「何をしている、早く出なさい」


カナタ「すみませ…うわっ!!…痛たた。何で床が濡れて……ん?」



―― 立ち上がろうと、そばに積み上げてあった箱に手をかけるカナタ。すると箱から出ていた何かに触れてしまう ――


カナタ「ん?なんだコレ?リボン?何でこんな所にリボンが…あれ、でもこの柄どこかで…」



ミーアM「実はこのリボンはね、ファリスとお揃いで世界に二つしかないのよっ!」

カナタM「そなんだ、じゃぁ宝物だね。」

ミーアM「そうよ、宝物!」



カナタ「宝物…そうだ、たしかミーアとファリスの…なんでこんな所に?」


クレール「何をしているんだい、早くでておいで」


カナタ「クレール卿このリボン…」


クレール「リボン?あぁ、今朝ミーアが付けていたリボンが落ちたんだろう…。さ、もう良いだろう?」


カナタ「ミーア、リボン付けてましたよ」


クレール「ん?そうなのか、それなら予備に沢山持っていたんだろう」


カナタ「……クレール卿」


クレール「なんだね」


カナタ「この箱の中…何が入っているんですか?」


クレール「・・・・・・。」


カナタ「…クレール卿…貴方まさか」


クレール「何を言っているのか理解できんな、さぁ、早くこの部屋から出るんだ」


カナタ「わかりました…っ!!」



―― クレールの言われるがままに、部屋を出ようとするカナタ、その姿を見て安心したのかクレールはカナタから目をそらした。カナタはその一瞬の隙を突き箱へと向かう ――



クレール「なっ…カナタ!!それに触るんじゃない!!」



―― クレールの言葉を無視し、箱を開けるカナタ。そこには可愛いらしいリボンをつけた、少女の頭部があった ――



カナタ「なっ……なんだこれ…頭?…ぐぅっ…ゲホッ」


クレール「早くそれをしまうんだ」


カナタ「…っ、ファリス…なぜ?引越したって…」


クレール「カナタ」


カナタ「クレール卿、これは一体どういうことです」


クレール「カナタ」


カナタ「答えてください!!」


クレール「カナタ、君は疑問を抱いたことはないのかい?」


カナタ「何を言っているんです」


クレール「なぜこの世界の科学は進歩しないのか。今のままで、科学の未来はあるのか…答えは、ノーだ。人と同じ所を歩いていては成果など見えない、なぜならばその道はすでに誰かが通っているからだ」


カナタ「クレール卿?」


クレール「すでに通った道になんの成果が問われよう、現にこの数十年なんの進歩も無かった。何も成果

が得られぬまま、人は病に倒れ、そして死んでいった。どうせ死ぬ運命なのであれば有効に使うのが一番だろう」


カナタ「クレール卿…まさか貴方は…人で…」


クレール「勘が良いようだな。結論から言おう。答えは…イエスだ」


カナタ「なっ…」


クレール「おかげで今の研究は飛躍的に進んだ…私の研究の成果だ。研究とは結果が全て、経緯などは必要ないのだよ」


カナタ「それでも、超えてはならない一線がある!!」


クレール「…何をいっているんだ?君も研究を手伝ってきたじゃないか」


カナタ「…え」


クレール「正確なデータを取るためには、サンプルは多いほうがいいんだ」



―― クレールは自分の研究資料を床にばら撒いた。ひらひらと大量の紙が中を舞う。ふと、その資料の中に見覚えのある物があった…そこには石死病の予防にとクレールが調合した薬の入った小瓶が書いてあるだった… ――



カナタ「あの小瓶…ま…さか」


クレール「ご名答…君のおかげで良いサンプルが沢山手に入ったんだ」


カナタ「…うそだ…そんな、じゃぁ村の人やファリスは…俺の渡した薬で…」


クレール「なぜそんな顔をするのだ?君のおかげだぞ?」


カナタ「やめろ…やめてくれ…」


クレール「あはははは、大勢の命を救うために彼らは犠牲になったのだ。犠牲無くして道は得られぬ。必要死だったんだよ…」


カナタ「やめろ!!」


クレール「何をそんなに怒っているんだ?この喜びを分かち合おうじゃないか、この研究結果さえあれば、多くの民を救ってやれるのだ、これ以上大切な人を失わずにすむのだよ」


カナタ「クレール卿、貴方は間違っている…こんなの、許されるはずがない!!」



―― カナタは床に散らばる資料を掴み、破り捨てた、それを止めるクレール ――



クレール「やめるんだっ!カナタ!」


カナタ「貴方は何故こんな…酷いことを…うわっ」



―― その時足元に積まれていた一際大きな箱が崩れた…そして中からは見知った…人だったモノが転がった それに気づいたクレールの目つきが優しくなった ――



クレール「あぁ、そんなところで寝ていては風邪を引いてしまうよ、さぁこっちへおいで」


カナタ「…あっ…あぁ……」


クレール「見てくれ、ようやく研究資料がそろったんだ、これで君を助けてあげられる…」


カナタ「そんな…そんな」


クレール「私の愛する…ステラ」


カナタ「…ステラさん……」


クレール「紹介しようカナタ。私の妻のステラだ」


カナタ「………」


クレール「あんな所に一人で寒かっただろう?悪かったねでもコレでもう大丈夫だ。何もかもがうまくいく」


カナタ「…クレール卿」


クレール「さ、今日はお祝いだ。僕の大好きなチェリーパイを作ってくれないかステラ」


カナタ「クレール卿!!」


クレール「どうしたんだい、カナタ。カナタも一緒にチェリーパイを食べよう」


カナタ「ステラさんはもう……死んでいます」


クレール「何を言っているんだカナタ。彼女はこの通り元気じゃないか」


カナタ「クレール卿…貴方の本当の理由は名誉でも、研究成果でもなく……ステラさんだったんですね」



―― クレールが持っていた食器を落とした。その顔は見る見る青ざめて何かをつぶやいていた…まるで今までの出来事を思い出しているかのように ――



(回想のセリフ)

クレール「…ステラどうしたんだい ステラ?ステラ!!あぁ、この症状は…ステラが…石死病に…」

クレール「くそっ、この研究も失敗だ!!早くしないと、ステラがっ…」

クレール「何故上手くいかない!!!こんな所でつまずいているわけにはいかないんだ…私には時間が無い!時間が無いんだ!」

クレール「何?急患…年齢は…そうか。入れたまえ…」

クレール「大丈夫、この薬を飲めばすぐ治る…さぁ、この小瓶を飲み干して…」

クレール「やった…新しいサンプルだ…感染者の血液と眼球…もう少し…もう少しだ」


(現実)

クレール「あと少し…あと少しなんだ…あと少しで…ステラが…」


―― うわごとのように呟くクレール…そこへミーアとアリアが戻ってきた ――


ミーア「お父様~?カナタ~?ここに

いいるの?」


カナタ「ミーア…、来ちゃ駄目だ!!」


ミーア「カナタ…え?お母…様…?」


カナタ「ミーア!!」


ミーア「え…ぁ…お母様…お母様!!なんで…だってお母様は今街にいるんじゃ」



―― 変わり果てた母親の姿をみて泣きじゃくるミーア。彼女の足元にはリボンが落ちている ――



ミーア「何で…お母様が石死病に…あれ?り…ぼん?」


カナタ「ミーア!!駄目だそっちは…」


ミーア「ぁ…」



―― ミーアの目線の先には ファリスの頭部があった ――



ミーア「いやあぁああああああああああああ」


カナタ「ミーアっ!!!ミーア落ち着け落ち着くんだ…」


ミーア「ファリスっ!!!ファリスが、ファリスがっ!!!」


クレール「あと少し…あと一人で…」


ミーア「お父様…お母様とファリスがっ…」


クレール「ミーア…」


ミーア「お父様…」


クレール「ミーア…最後の一人…」


カナタ「いけない!!ミーア逃げてっ…」



―― カナタの制止も虚しく クレールは隠し持っていたナイフをミーアの胸に突き立て、小瓶の薬をその傷口に垂らした ――



ミーア「お父…様?」


クレール「大丈夫、これでステラは助かる…ミーアお前のおかげだ」


ミーア「痛い…痛いよぉ」


カナタ「ミーアっ!!!アリア、ミーアを助けるんだ」


アリア「わかった」



―― クレールからミーアを奪い急いで止血するアリア…しかし血は止まらない ――



アリア「血が止まらない…、カナタ、ミーアの体が」


カナタ「石化し始めている…あの薬かっ…」


クレール「ははは…完成した…私の研究はたった今完成したのだ…」


カナタ「クレール卿!!貴方はなんて事を…」


クレール「カナタ…私の研究は正しかった…それが今ミーアの体で証明されたのだよ」


カナタ「なに…」


クレール「ある特定の条件下で感染した場合…そう、直接石死病患者の血液を体内に取り込んだ時…体の細胞は書き換えられ石化が始まる…」


クレール「そして新たな発見だ…特定の条件下で感染した患者の瞳を見つめると…その瞳を見た者も感染する…ほら、見るがいい…ミーアの瞳を見つめた私も、石化が始まった。あははははは」


アリア「カナタ、ミーアが」


カナタ「ミーアっ!!しっかりするんだ、ミーア!」


ミーア「カナタ…駄目!!こっちを見ないで!眼をみたら…カナタも感染しちゃう!!」


カナタ「ミーア…」


ミーア「嫌だ…嫌だよ、怖い……カナタ…怖いよぉ」


カナタ「くそっ…治療法は無いのかっ」


クレール「答えはノーだ。この石化の治療法は…他人にうつす事で治る…」


カナタ「他人に…うつす…?」


クレール「そうだ…このウイルスは心に反応する。愛する者がいればその心に反応し 相手の体を感染させる。お互い惹かれあっていれば ウイルスに対抗できる抗体が生まれ…石化を止めることができる…お互い惹かれあっていなければ相手にうつるだけだ…ウイルスと言うより呪いだな」


カナタ「そんな事って…」


クレール「あぁ、ステラ…今すぐ君の石化をといてあげよう…愛しているよ…ステラ」



―― クレールは石になったステラを抱きかかえ そののま動くことはなかった ――



ミーア「…私の心…」


アリア「ミーア…しっかりして」


ミーア「あぁ…カナタ…」


カナタ「ミーア、俺の眼をみて…俺にうつすんだ、そしたら君は助かる」


ミーア「嫌…そんなの嫌…カナタなんて大嫌い…大嫌い…大嫌いなんだから…」


カナタ「ミーア…何を言って…」


ミーア「嫌いだから、…大丈夫…カナタにはうつらないから…」


カナタ「っ…ミーア…君は…」


ミーア「嫌い…大嫌い」



―― 瞳を閉じ懸命に絶えるミーア。呼吸が荒く 上手く声にならなくても 彼女はずっと叫んでいた…しかしその思いもウイルスの前では通用しなかった…カナタが石死病に感染したのだ。生きたまま石化していく為石化した部分に痛みが走る ――


カナタ「…痛ぅ…」


ミーア「カナタ…どうしたの」


カナタ「なんでもないよ…ちょっと擦りむいただけだよ」


ミーア「カナタ…大嫌いだよ…今までも…これからも…ずっと」


カナタ「ミーア?」


ミーア「だい…きら…い」


カナタ「ミーアっ!!…僕も大嫌いだよ…ミーア」


アリア「ミーア、どうしたの?」


カナタ「…ミーアちょっと疲れちゃったんだって…休ませてあげなきゃ」


アリア「ねぇカナタ、ミーアはカナタを嫌い?」


カナタ「…っ」


アリア「カナタはミーアを嫌い?」


カナタ「嫌いじゃない…好きだよ…大切な家族だ」


アリア「すき?」


カナタ「そう…宝物…」


アリア「…宝物…すき」



―― ウイルスの充満した研究室に居たせいだろうか、カナタの石化のスピードが早くなっていく、苦痛に顔をゆがめながら賢明に耐えている ――




アリア「カナタ…」


カナタ「どうした…アリア」


アリア「皆、動かないね」


カナタ「そう…だね…アリア、俺が死んだら…君は」


アリア「死ぬ?あ、カナタ眠いの?」


カナタ「え?……あぁ、少し眠いかな」


アリア「つまらない…」


カナタ「ふふ、そうか…ならお話しをしてあげよう」


アリア「どんなお話し?」


カナタ「そうだな…なんの…話をしようかな…。むか…し、森に…魔女がいて…」



―― 石化が進むにつれてカナタの口数は減っていき…そしてついに しゃべらくなった ――



カナタ「………」


アリア「それで、森の魔女はどうなったの?…カナタ?」


アリア「………?カナタ、カナタ?」



―― アリアがいくら呼んでもカナタが目覚めることはなかった ――



アリア「カナタは私の宝物……すき」


アリア「カナタ眠い?…眠る時は子守唄を歌うの…だからカナタ、起きたらまたお話の続き、聞かせてね…」


―― 石化したカナタに 子守歌を歌うアリア ――


カナタM「アリアは歌った。村から離れたその研究所からは…その歌声が風に乗り響き続ける…何年も何年も アリアが動かなくなるその時まで永遠に…」


おわり

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