第168話

「お母君様も摂政も、他の者達とてさようにございます……特に摂政は。私から全てをぎ取る癖に、を望みます……」


「おうよ。摂政は青龍を抱きし者ゆえ横暴だ。只々力を欲する。……だがそなたが望めば、私は全身全霊をかけそなたの意を叶える。無論鸞一族も従えよう……だが、そなたの御子に青龍を抱かせこの国をつかさどらせ、今や歪んだ権力の在る場所を戻したい……その為には、そなたには我慢を強いらねばならぬ」


「……その為の私でございますか?その為だけの?」


 今上帝様の御目が、潤んで輝かれる。


「おうよ。そなたはそれだけの者よ……そなたは今生で致すべき事を果たして、私と永きに渡る番いであるのだ……その為に誕生致したのだ。私のに誕生致した、ただそれだけの者よ。他に望まば大神様よりお許しを頂いたゆえ、それは恐ろしい天罰を下して頂く……」


「はっ?お兄君様……それを餌に私に今生を生きろと?」


「そなたの今生など、私達の生に比ぶれば高々のものよ。いずれそなたも理解できようが……その間私は、そなたの情人でよいと思うておる」


「情人?」


「瑞獣も神使も、永きに渡る生を共と致す伴侶は、そう簡単には決めかねる。なぜか?余りに長すぎて、その間を伴と致すが大変だからだ。ゆえに夫婦となるまでを時間をかける。そなたの今生をその期間と致すは、実に妙案である」


 神楽の君様は銀悌が教えてくれた、瑞獣や神使の恋愛事情を語っている。

 銀悌は自分も恋愛には不慣れながら、ソツのないタイプなので、そこはキチンと仕入れてアドバイスをするあたりは流石だ。

 まっ、夜な夜な遊び歩いている、恋愛の達人〝白〟から教えを受けたのだが……。

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