第157話

「それは如何な事だ?」


 じっくり間近で覗き見ない限り、その大きくつぶらな瞳は黒く見える。

 女房はそれは輝く様に見える、潤んで黒い瞳を見入った。

 皇后様も愛らしく可憐であられるが、これ程までにお美しいお方は、この宮中でも見た事がない。

 なにせ豪族方が差し出す采女うねめ達は、その美貌で選び抜かれたもの達が選出されて差し出されるし、公卿貴族の姫様方は、お小さい頃より美しくなる為に手を尽くされておられるから、宮中は美しさでいえば選り抜きの美女揃いだ。

 そんな美女の宝庫で、最近はおたくましくなられ、大人の色香などをお放ちになられて、宮中の美女達は今上帝様に邪まな思いしか持っていなく、もう色気ムンムンフェルモンムンムンとなっている。……にも関わらず、今上帝様は皇后様にしか、お目を留める事をなさらなかったが、さすがに新婚早々新妻に寝込まれてしまわれ、ちょっとお目をお留めになられるといっても、さすがに天子様は格が違いすぎる。

 美しさの度合いが半端無い女御様ならば、宮中の美女など足元にも及びはしないだろう。


 さて、此処でこれ程の美女が、この内裏の何処に存在していたのだろう、という事にもなっているのだが、皇后様を心配されて陰陽博士が送り込まれた女官が、突如として居なくなったので、たぶん?と噂にもなったのだが、皇后様にずっとお付きの女官様は、決してでは無いと断言された。

 それというのも、かの女官はさほどの美形ではなかったそうで、あれ程今上帝様を虜とされる藤壺の女御様であるはずが無い……と、そこまで酷いお言い様で、怨霊を探して歩いて取り憑かれ、非業の死を迎えたのでは?とそれは気の毒がられ、女房達を総動員して井戸の中やらを探させておいでだ。

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