第153話

「……かと存じます」


「ほほう?では、二人で手慣れよと申されるのか?さても、そなただけ皇后とも致し、確かに手慣れてまいるは不公平というものである……さすがお母君様は、を見越されておられたか……」


 しみじみと感じ入っておられる。


「ならばお言付けに、従うといたしましょう」


「おう、そういたそう」


 神楽の君様は、主上様にしがみつかれて唇をお寄せになられる。


「お兄君様……そうではなく……」


 主上様はクスリと笑まれると、神楽の君様を抱かれて夜御殿よるのおとどの中に入られ、御帳台の上に横たわらせられた。


「主上よ……」


「はい……」


「此処でも、修行は致せるのであるのか?」


「此処が、一番よろしいかと……」


 主上様は真顔で仰せになられ、再びお顔をお近づけなられた。

 陶酔する程の時が流れる。

 熱く熱く激しさを増される主上様を、陶酔しきりの神楽の君様がお受けになられる。

 主上様はその妖艶なるお姿に魅入られながら、女官達の正装である十二単衣の唐衣からぎぬと、の紐に手を掛けられ手慣れたご様子で剥がされていく。


「主上よ」


 表着うわぎの襟元から覗かせる、幾色もの重ねられた艶やかなる衣の襟に、主上様がお手をかけられた時に、神楽の君様はその潤んだ瞳をお向けのまま言われた。


「今回は実に気合を入れて女となった……だが仮の姿である」


「はい……」


「ゆえに上手く無い所は教えてくれ。いろいろと調べたが、私は真の女を知らぬ」


「お兄君様……如何してその様に、気合をお入れてでございます?」


 主上様は嬉しくて仕方の無い、お顔を向けられる。


「それは……?」


 スルリと襟元からお手を滑り込まされると、一瞬にして幾重もの衣がハラリと緩んだ。そのまま衣擦れの音と共にそれ等はいとも簡単に滑り落ち、神々しい程の白肌をお見せになられた。

 紅色の長袴に、白く透き通る程の白肌が煌めかれる。

 主上様は躊躇いを持たれずに、長袴の紐にお手をおやりになられる。


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