第152話

「へっ?」


「皇后がであるのに、心なくも私は貴方様に会いに行っておりました。しかしながら、屋敷には誰もおらず……」


「ああ?銀悌は私がおらぬ間に、黄砂と酒をこさえに参ったのだ……そなたも琴晴も気にいっておるゆえ……」


「お兄君様……陰陽博士を名で、呼ぶはおやめください」


「なにゆえである?」


「気が悪うございます」


「うーん……」


 神楽の君様は深く考え込まれてしまい、何時もの様に主上様のお顔がお近づきになられて、唇をお重ねになられた。

 当然ながら神楽の君様はお受けになられて、それは長い間の時を過ごされた。


「私は今宵貴方様の処に忍んで参っておりました。ところが誰もおらず、神山におゆきになられたと諦めて戻って来ると、貴方様を目に止めました。もはや目に止めてしまえば、抑える事などできようはずもございませぬ。心ない事と知りながらも、私は貴方様が欲しいのでございます」


「それは難儀をかけた。私はまだまだ未熟ゆえ、母君様からそなたと二人で修行を致す様に仰せつかるわけである」


「私も?でございますか?」


「さようなのだ。ゆえにそなたまで修行をさせる羽目となり、実に申し訳が立たぬ」


「さようにございますか」


 主上様はそれはお嬉しそうな表情を、お浮かべになられる。


「……しかしながらどうしてとやらは、一人で修行できぬのであろうか。それが実に心苦しゅうてならぬのだ」


「お兄君様、恋愛とは一人では致せませぬ」


「母君様もそう申されたが、如何してであろうか?実に難儀な事を言われる……」


「……では、この様な事は一人ではできませぬ」


 主上様は再び、それは熱く唇を重ねられた。


「ほう?こういう修行を致すのか?」


 神楽の君様は、お目を丸くして仰天される。





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