第151話

「何ともいけしゃあしゃあと、言われる事よ」


「ならば如何した事か、お教えくださいませ」


 主上様はそれは熱い目で、女官神楽の君様を見つめられる。


「女官とは顔を晒す事があるゆえ、白が気を利かせてくれて、化粧を施してくれたのだ」


「化粧でございますか?原来化粧とは、美しく見せるものにございましょう?その化粧はどう見ても、貴方様の美貌を損ねておりますが?」


「そうなのか?白は宮中で働く女官のたしなみであると申して、白鼻芯族にしかできぬ技であるものを施してくれたのだ」


「ほう?」


 今上帝様はマジマジと、愛おしきお方を見つめられた 。


「……おお!だがこれは女官仕様であるゆえ、これでそなたに会うはやめる様忠告されておった……」


 神楽の君様は、それはしくじったーと言わんばかりに言われる。


「別に貴方様ならば、私は大事ございませぬ……此処に御座します間、でいられますか?」


「そなたには見せるな!と言われておる……」


「なにゆえか?実に愛らしゅうございますのに……」


「そうか?気に入ったか?」


「はい。愛らしゅうございます」


 主上様はお腰をお抱きになられながら、お顔をお近づけになられる。


「うーん?余りに褒められると、この顔に嫉妬する。此れは私の素では無いから気が悪い。ちょっと待たれよ、直ぐに落としてまいる」


「落とされるので?」


「おう。その辺の水にちょちょいとして洗えば、化粧だから落ちるはずだ」


 しかし主上様は、シカと引き寄せられたお腰にあるお手の力を、お緩めにはなられない。

 ジタバタとされた女官神楽の君様は、真剣に見つめられる主上様をガン見された。


「……それは、後になされてくださいませ」


「如何してだ?その様に熱く見つめられると、この顔が腹立たしい」


「私はここ数日、貴方様の処に忍んで参っておりました」


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