二巻

第140話

 神楽の君様は琴晴の手配で、まんまと後宮の女官として、潜り込む事に成功なされた。

 ……とか言って、かのお方がバックに居れば、事が運ばないわけはないのだが。

 ただ、事を運ばすには駒がいる……ようだと琴晴は気づいた。

 とっととかのお方のお力で、ポポーンと事を運ぶわけには行かないのか、囲碁を楽しまれる様に楽しんでおられるのか?

 とにかくそんな感じで、駒をお使いになられてを運ばれる。

 かのお方の手駒となった琴晴は、それはそれは出世をするそうだが、それまで身が持つかどうか自信が無い。何せかのお方は人間ではないから、何処まで琴晴の限界をご存知なのかと、最近はが不安になって来ている。

 ……で、初夜の儀の折に、生死のきわにお互い立たされた感からか、何故か仲間意識的な物を持ち合わせてしまい、上皇様の手の者とご認識の典侍ないしのすけ様に上手い事言って、女官神楽の君様を皇后様付きの女官とさせる事ができた。

 ……まっ、巫女神楽の君様を送り込んで、なんと大成功を収めた実績があるので、今度は皇后様のご様子を見させ、お護りする〝女官〟とそそのかしたら、二匹目のドジョウを脳裏にお浮かべの典侍様が、まんまと乗っかってくださった。

 なんとも人間の強欲とは、見ている者には恥ずかしい物である……と、自分の事を棚上げの琴晴は思う。


 神楽の君様はそれは尊きお方だから、女官といっても地方豪族が差し出す、配膳係の采女うねめから移動したりする、雑務を行う下級女官というわけにはいかない。

 無論中央氏族の、氏女うじめともいかない。

 当然貴族達が入内させる女官や、もっと高貴なお方々が今上帝様のお目に留まるを目的とされる女官の様に、大々的に出自を誇示して侍らすわけにもいかないから、ピンからキリまで統率される、内侍司ないしのつかさの典侍様にお預けして、して頂こうと目論んだ。

 つまりまたまた、聖なる女官を使って、今度は皇后様をお救いすると云う触れ込みとしたのだ。


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