第139話
「我が母君様が、上皇様を
………朱麗と蒼輝……実に美しい御名だ………
高貴なお方々は、御名を他言致されない。
御名は霊的な人格と結びついているとされ、その名を呼ぶ事は霊的人格を支配できるとされる、此処中津國での習俗によるものであるが、神である神楽の君様にとったら、そんな言い伝えなど取るに足りない物なのだろう。
身分の低い琴晴に、事もあろうか貴いお二人の御名を教えてくだされた。
「我が
神楽の君様の青月を仰ぎ見られる、眼差しが熱く潤んでおられる。
お愛おしき弟君様を、想われて熱く潤まれる。
琴晴はそのソツのない処世術で、お妃様からのミッションを理解した。
「神楽の君様。皇后様は未だ解らぬままに、お眠りのままにございます。また、内裏の霊は相も変わらず、女房達を脅かせております、神楽の君様に、できますれば手助けを頂き、霊の正体をお確かめ頂きたく存じます」
「霊の正体か?そなたでも神祇も解らぬのか?」
「神降ろしなど、お妃様や神楽の君様がお出での今生で、よく恥ずかしくもなく致せるものでございます」
「はっ?そなたの世渡りの上手は本物であるな?よくもぬけぬけと、おべっか使いをいたすもの」
「おべっか使い、ではございません、真意にございます」
「解った解った。どうせお母君様に、内裏に上がれと申されておる。そなた良き様に手配を致せよ。お母君様はかなりの我儘者であるからな」
神楽の君様は、大きくため息をお吐きになられながらも、大好きな青月に再び視線をお送りになられた。
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