第135話

「よいか?もしも他の者が統べれば、我ら大神に仕えしもの達が黙ってはおらぬ。我らは八百万の神々に匹敵致す、強者つわもの揃いのもの達ゆえ、決して天の大神とて他の大神とて引けはとりませぬ。ただ治世は乱れに乱れる……治世が乱れ世に穢れが生ずれば、我が主人は容赦なく大地を揺らし全てのものを無に還す。ゆえに、無欲で何事にも拘りを持たれぬお方であるにも関わらず、一番に恐れられておるのです。その権限を天より頂いておられる、唯一の神なのですから……」


「………」


「ゆえに私はそなたを産んだ。今上帝をお護り致す為に……青龍の力を抑える為に……そしていずれ誕生致す、皇后が産みし青龍を抱けし者に、この国を司らせ原来の姿に戻す為に……」


 神楽の君様は、至極神妙にお聞きになられる。

 それをお妃様は、笑みをお浮かべになられて見つめられる。


「……して?そなたは、女神となる決心がつきましたか?」


「母君様……今のお話しのどこに、私が女神となる必要がございます?」


「……そうか?今上帝は、さほど強うは望んでおらぬのか?……まっ、そうであろう……できうれば、そなたにも、今上帝の御子を産んで欲しかったが……今上帝が望まぬならば致し方ない……」


「私に今上帝の御子を儲けて、欲しいのでございますか?」


「まっ……これは私の我儘ゆえ、捨て置かれませ。今上帝を護る役としてそなたを産んだが、今上帝がそなたに恋心を抱くとは、さしもの私も見抜けなんだ。私もまだまだでございます」


 お妃様は小さくお首をお振りになられて、嘲笑される。


「そなたはとして、今上帝を護って行くと信じておりましたが、らんは〝恋情〟に及ぶ物はないゆえに、そなたが心を開いたならばと思ったのです」

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