第134話
お妃様はしみじみと、神楽の君様をご覧になられる。
「……全くあ奴らは、何時も余計な事をしてくれる……」
「確かに皇后が誕生せずに、今上帝に摂政の孫を得られねば?」
「朱よ。そなたはまだまだ……よなぁ」
「はっ?」
「……では、如何して皇后は、現にこうして存在いたしております?」
「……それは、青龍が……」
「何を戯けた事を?青龍がそこまで、致すはずがございますまい?」
「……しかし青龍は、〝力〟をこよなく欲します」
「……と言うて、あ奴はいろいろと姑息な手を、打てるものではございませぬ」
「……では???」
神楽の君様はジッと愛しき我が子を、その潤んだ深き紫色の瞳に映し出されるお妃様を見つめられた。
「よいですか朱よ?今上帝には如何致そうとも、皇后との御子を得て頂かねばなりませぬ。二度と……二度と摂政の様な輩が、天子を脅かさぬ為にも……天子は天に代わりて、今生を治めし者でございます。よいか?それは天孫の血を、引いておらねばならぬのです。我が大神様がお譲りした、天に座す大神様の血を引いておらねばならぬ……これは大神様の思し召しではございません。我ら大神様に仕えしもの達の思いなのです。この地上に大地をお創りになられ、統べられし大神様は、当然の事ながら国を造りその国をも統べる、権限とお力をお持ちであられたが、なんとも無欲なお方ゆえ、あっさりとそれらをお譲りになられた。天によって産み出される大神と、そうではない大神との違いをお見せになられた。あっさりとお譲りされた大神様とは違い、大地と国を巡っては、神々同士が争ったのですから……そんな大神様が、天の大神様にお譲りしたのです。その大神の血を引く者しか、この国を統べる資格など無いのです、仮令青龍であろうとも……」
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