第127話

などと、関心している場合ではない。


「神楽の君様、如何な御用で?」


「……なに、そなたが身に余りすぎる物を賜ったと聞いて、どれ程の物か見に参ったのだ」


とか言われながら、それはご丁寧に瓶子へいしに入れた、銀悌手作りの酒をくださる。


「確かに此処の厩はいいなぁ。牛車も女房も舎人も少しは必要だろう?」


「……と、申されましても……」


「ゆえに黄砂に心持ちの良い、哀れな者達を見繕わせておるゆえ、それは大事に使こうてやれ」


「……とは申せられましても?」


「よいよい。馬を宜しく頼みたいので、多少の事はいたす」


「う、馬をでございますか?」


「あれらは、なんだかんだと言うて、都会に住んでみたいらしいのだ」


白がニヤリと笑って言った。


「はっ?」


「身に余りすぎる賜り物は、荷が重かろう?」


「……それは、困惑致す限りにございます」


「ゆえに大方面倒見る代わりに……此処を良いように使わせてくれ、という事だ」


「あーなるほど……神楽の君様の、お屋敷とされるので?」


「いや、此処の主はそなただ


「?????」


「まっ、俺や馬共みたく、都会の方が合う者がおると言う事だ」


白は悪びれずに言う。


「……なるほど、では母屋もやをお使い頂ければ……」


「阿呆か?そなたの屋敷と申しておろう?東か西……北もいいな?対屋たいのやを間借りさせてくれれば良いのだ」


「母屋ではない……のでございますか?」


「なんだ?不服そうであるな?」


「神楽の君様、私はこの様に広過ぎる母屋は……」


「はっ……先は陰陽頭おんようのかみからな、少しずつ慣れておけとの事だ」


「ど、どなたのお言葉で?」


「こんな事を申されるは、お母君様しかおられまい?」


……うわーマジかぁ……


思わず琴晴の心中が、悲鳴をあげる。

まだまだ何かミッションを与えられる事を、処世術に長けすぎている琴晴は悟った。


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