第126話

「おっ!此処だ此処!!」


 喜びよりも明日の心配などしながら、それは広くなった屋敷の母屋もやなど、到底落ち着くわけもなく、それは貧乏人らしくひさしなどに置いた円座わろうだに座していると、それは賑やかにやって来る輩が目に入った。


「おー!これはいいなぁ」


じゅの屋敷よりでかいぞ」


 と、それは大喜びの、栗毛色の馬が目に飛び込んだ。


「げっ!!!」


 琴晴の一声は搔き消える。


「此処なら文句も言わずに、居てやってもいいなぁ」


 当然ながら、白馬も一緒に居て言う。


「なかなかの厩であるしなぁ……朱の所はしょぼくていかん」


「そうだそうだ……」


「……いやいや馬よ。如何して此処におるのだ?」


 さしもの琴晴も廂を下りて、馬達の側に寄って言った。


「いや、お前がえらく立派な屋敷を賜ったと聞いて、わざわざ見に来てやったのだ」


「……いや?見に来たというよりか……」


「まぁ……いいではないか?」


 琴晴が馬達に文句を考えていると、背後から白が声をかけた。


「はっ?どちら様で?」


「何を?もう酔っておるのか?白だ白……」


 それは楽しげなお声をかけられるは、目に鮮やかなる朱色の狩衣姿の神楽の君様で、もはやトレードマークとなられている様な、無冠でそれは長い御髪をなびかせておられる。


「は、白?」


 琴晴は二度見して、それでは収まらずガン見する。

 あの不恰好で均整の取れない白鼻芯ではなく、一応人間の姿だ

 それもなかなか渋系の、武官といったていだろうか?

 たぶん神使の世界ではこんな感じ?に見えているという事か?

 神使といっても、大神に仕えるものは武芸にも突出しているらしいから、武官なのか?じゃ、銀悌は?

 ……詰まる所、一族の家柄的な事か?……

 はてさて、未知の世界の者達ではある。


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