第119話

「……ならば私も……」


 主上様は皇后様がお持ちの白餅を、パクリと食さられる。

 そしてお二方は、見つめ合われて微笑まれた。

 この白餅は仲睦まじい子宝に恵まれた老夫婦が、子宝に恵まれる様にと寝所に備えてある物で、これを一つずつ食べてから床入りとなる。

 しかし嬉しさと緊張で強張りをお見せになられる、皇后様にお気づきなられた主上様は、御自らの御手で皇后様にお食べ頂いて、少しでも緊張をお和らげになられたのだ。

 皇后様は有り難くもお優しい主上様のお気持ちに、ご緊張を取り除かられ、ただただ嬉しいお気持ちだけをいっぱいにされた。

 主上様はそのまま皇后様を御帳台みちょうだいの上にお寝かせになられると、下には何もお付けになられていない、初夜装束に手をお掛けになられならが、静かにお顔をお近づけになられた。

 皇后様は長年恋い焦がれた夫の、その端正なる美しさに酔いながら、つぶらな瞳をお閉じになられた。

 静かなご寝所に、縺れ合うお二人の肢体の音が聞こえる。

 熱く交わし合う唇の音が聞こえ、その音に酔いしれる様に、若いお二人は激しさを増していかれる。

 無我夢中で酔いしれておられた皇后様は、主上様をいざお迎えする時に、必ず致す様に、散々お母君様や女房達から言われていた事を思い出された。

 お互い荒い息をお吐きになられながらも、組み敷いてそれは甘い艶を放たれる夫主上様を仰ぎ見られた。


「暫し痛むやもしれぬが、堪えるのだぞ」


 主上様は皇后様のお耳元で囁かれ、徐ろに躰を動かされて、そのまま皇后様の御脚をお開きになられ、それは優しくそれは静かに、皇后様に身をお沈めになられていかれる。

 皇后様は一瞬身をお引きになられ様とされたが、直ぐに腰をお上げになられて、主上様をお迎えになられた。

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