第113話
「お兄君様!」
「おっ主上?如何致したのだ、こんな夜半に」
神楽の君様はそれは呑気に、銀悌が
「また、酒をお飲みで?陰陽博士とも仲がおよろしい様で」
「あー琴晴か?」
神楽の君様が御名を発せられると、主上様はそれは酷く
「……あれは不思議と、気に入っておる」
神楽の君様はグィッと飲み干されると、盃を今上帝様に手渡された。
「まぁ
今上帝様は唇をきつく噛みしめる様になさりながら、盃になみなみと注がれるを黙って見つめられる。
「お兄君様は、琴晴がお好きでございますか?」
「琴晴か?あれは良いな……うん。好きである」
ギリッと、今上帝様の口元から音がした。と同時に
「あの者はなりません」
「何故だ?あれはいろいろと、使える男だぞ。此度の流行病も、押し留めたであろう?」
「あれはお兄君様が、あれに手柄を立てさせたのでございましょう?」
「おっ?そうであった。だがやったのはアヤツだぞ?私は神山の薬草を、採りに連れて行ってやっただけだ」
「何故ゆえ、神山にあの者をお連れになられます?」
「何故ゆえ?特効となる薬草が、神山の神泉にしか無いからだ」
「あそこは……あそこはなりませぬ」
「主上よ、そなたの言っておる事が解らぬ?」
「……解らぬ……のではありません。解らぬふりをなされておいでなのです……いつも貴方様はそうなのです……何時も何時も……私の事はご存知の癖に……」
今上帝様は神楽の君様の御手を、きつくきつく握りしめられると、それは辛そうに苦しげに、顔容を歪めて大粒の涙を溢された。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます