第102話
「
白はそう言いながら、銀悌の鋭い爪を
「銀悌よ。さすがに、そなたには敵わんからな……だが、いかに大事な主人とて、真実を伏せて育てて如何いたす?母御が望んでおられる事なのだ……」
「はぁ?何を!」
銀悌は白の首筋に向けて牙をむく、それを這々の体で躱して白は銀悌を直視する。
「母御は朱を、今上帝にくれてやる気なのだろう?」
銀悌の鋭い爪が白の腕を掴み、白は悲鳴にも似た声で言い放った。
「何と?」
「そなた程の切れ者が、察しておらなんだのか?」
呆然となった銀悌に、顔を近づけて白は囁く。
「あれ程の美貌を、持って誕生せし皇子……何故かと考えた事はなかったのか?いいか銀悌。如何に天が気紛れといえど、あれ程に美しい男は誕生させぬものよ……今上帝は原来ならば女体に興味などない者だ。だが、それでは母御が愛する上皇に最も似た今上帝に、上皇の面影を残す御子を得られぬ……」
「……………」
「ゆえに朱を与えて、餌とする算段なのだろう?」
ゆっくりと、穏やかな表情に戻った銀悌が白を睨め付ける。
「朱はもはや神だからな、今上帝が望めば女神となり得る……。もしも望まぬとも、朱を与えて皇后にだけでも胤を与えさせる……」
「……………」
「我らには、ご法度となっておる媚術があるからな……幻惑でも良いか?その時期に、朱と思わせて孕ませるは可能だ……」
「そなた……」
「あの母御の事だ。今上帝の御心が朱に存在するならば、御子の一人や二人や十人や……一向に気にはなさらんだろう。否、それも今上帝の一部、と朱に愛せよと言われるだろう?そうだろう?あのお方は異常な愛情の持ち主よ……ならばそなたは朱に、その恋情を教えてやらねばなるまい?今チクリと痛むそれが恋の一部であると……」
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