第100話
「我が君様、神泉に薬草を採りに参られてお戻りより、お心地が
幼少の砌よりの教育係世話係の銀悌が、心配顔でお側に侍って聞いた。
「神泉でご気分がお悪かったとか?琴晴殿が心配しておりました」
「銀悌よ……」
神楽の君様は仰向けにおなりのままで、益々赤くなる眉月を瞳に映されながら言われた。
「はい……」
「如何致した事であろう?神泉に映し出された主上を見た時より、我が左胸が痛いのだ……」
ぎゅっと左胸を握られて言われる。
「……それは……如何して?」
銀悌は今までにお見せになられた事がない、神楽の君様のお姿に身を近づけて声を出す。
「……主上は気怠げに碁を打っておられた……」
「碁?でございますか?」
「うん。黒の碁石をそれは物憂げにお持ちになられ、見た事もないような、気怠げな表情を浮かべておられた……もしや、またどこぞご不調なのではあるまいか?琴晴に聞いた……」
「琴晴殿は何と?主上様のお身体は、大事ないのでございますか?」
「いたく健在らしい。皇后をよく寝所に招いておるそうな……」
「それは……何よりでございます」
「うん。昨夜も召されて、気怠さが残られたのであろう……」
銀悌はそっと神楽の君様の額に手を置いた。
「それがお寂しいので、ございますか?」
「うん、銀悌……。如何してであろう?ここがとても痛い……あの様な表情を、私は見た事もなかった……男と女のそれは、主上をあの様にして見せるものであるのか?さほどのものであるのか?」
「我が君様……。ご夫婦でございますゆえ……」
「夫婦とはそういうものであるのか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます