第90話

 天子とはだけではなく、 政治も絡んでくるから后妃がいる事が当然で、それで臣下のバランスを測る事もある。

 つまり我が一族の様に実権を一族で締めない様に……力の有る一族を得る為に后妃を迎えて均整を測り、帝が優位に立つ様に仕向ける事もある。

 まっ、十人以上后妃様が存在すれば、それはかなりの確率で政治云々よりも、只々旺盛なお方であると判断していいと思うが……。

 しかし、この上皇様と今上帝様は、全くその気の薄い方々だ。

 上皇様はそれでも数人の后妃様はおいでであったが、この若き今上帝様はその気がないだろう。それは皇后様と初夜の儀をされるまでの、ご様子を見ていても理解ができる。

 関白様はてっきり今上帝様は、女体にご興味の無いお方であろうと思っていた程だから、昨今の今上帝様の皇后様へのご執心ぶりには、吃驚しているというのが本心で、仮令女体にご興味が無いとしても、今上帝様としてのお務めを果たされるとされるならば、陰陽寮の指し示す吉日だけの房事となるだろうと読んでいたが、なんと以外でも皇后様をお呼びになられておられる。

 それは、若い男のが開花したという事か……。ならば今度は、予想だとしていなかった事だが、他の女房女官にお気が行くのではないかと期待をしたものだが、それをあっさりと否定されてしまった。

 先も云ったが、后妃達には大臣達の思惑が蠢き、一族の栄華が大きく関わってくる。我が一族は遣り手の父摂政のお陰で、この世の春を謳歌している。この春を永続的にしたい父の思惑は空恐ろしいもので、そして着々とそれは実現しようとしている。

 そんな父に対抗する気もなければ、刃向かう気すらないが、もしも今上帝様が女体に目覚められたのであれば、あわよくば……という気持ちが無いわけでもなかったし、そう考える者達も多いはずだ。

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