第77話
「……しかしながら、結局の処あれは効き目の無い媚術でございますゆえ、主上の気持ちを変えるなどという事には至りますまい?」
「至る至らぬ……ではございません?そなたが姑息な手を講じる事自体が、問題ではありませんか?」
「……何も偽を掴ませずとも……」
「ほお?ならばそなたは真に、主上に術を施したのですか?」
「あ……いえ……なかなか上手くまいらず……」
「上手くまいれば、致したのですか?」
「それは……」
神楽の君様は至極考え込まれた。
初めて人間と、肌と肌を合わせられた。
唯一無二の弟君様だからだろうか、安心感と温もりが心地よくて、結局の処全てを委ねてしまわれた。
弟君様の上気と陶酔する姿に、不思議とご自身も高揚し甘い感覚に流されてしまわれた。
これが人間の云う触れ合いとか、交わり合いとか、睦み合いとか云うものなのだろうが、なんと甘美なものであろう……。
あの肌と肌の触れ合いと舌と舌の交じり合いは、躰の高まりを増させて上気させ、下肢と下肢の睦み合いは今迄知らずにいた、興奮と快感を開花させた。
ゆえに神楽の君様は、今上帝様に全てを委ねた時点で、全ての思考を停止させて、襲い来る波に呑まれて溺れてしまわれた。
結局、媚術の事などすっ飛んでしまって、今上帝様との行為に一心不乱となってしまわれた。その行為が一回では終わらなかったから、神楽の君様の躰にそれらは、深く刻み込まれてしまわれている。
「まっ、そなたが施術致さなかったゆえ、解らぬままです」
「……あれは、
「……それは如何でしょう?ただ互いの心臓を合わせ合うのです。それを背からの掌で術を掛けねば、相互の思いは二重のものとなりましょう?」
「お母君様?」
神楽の君様は、和かに微笑まれるお母君様を凝視される。
……お母君様に逆らう事などあり得ない事だ……
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