第73話

「そなたそのまなこの色は如何いたした?生まれ持ったものか?」


「はぁ……生まれ持ったものだ主上よ」


 神楽の君様は露わな姿を、恥じらう事すらされるご様子もなく言われる。


「はっ……何を巫女風情が……?」


 そう言われるものの、巫女を食い入る様に見つめておいでだ。


「……お兄君様は男だ……だがそなたは女だ……」


 主上様は、膨よかで豊かな乳房を見つめられる。

 しなやかで、白く浮き上がる白肌を、柔らかで丸みのある裸体を見つめられる。


「物の怪の類か?」


 そして苦々しく渋面をお作りになられた。


「瑞獣ならば物の怪と変わりない」


「何と?そなた……」


「そう疑心暗鬼になられるな。私は朱だ……そなたの兄宮である」


「しかしながら……」


「私は大神様より神を許されしものだ。女神にもなれる」


「……真にございますか?」


「まっ、女の身となっておれば、疑心暗鬼にもなろうが……」


「なぜこの様な?」


「それは……」


 神楽の君様は、主上様のはだけた胸元を見つめられて考え込まれた。

 まさか媚術を施しに来たとは言い難い。

 その術で自分への気持ちを、皇后様に移行させようと目論んだとは、先程の告白を耳にして言えるはずが無くなった。

 それを口にすれば、今上帝様との関係が壊れてしまう様に思われた。唯一無二の弟が居なくなる様な不安を抱かれた。


「そ、そなたの一番になってやろうと思うて来たのだ……母君様が、そなたが望めば女になれ、と命じられたからな」


「一番?」


「お初だ


「巫女となってでございますか?」


 今上帝様は、先程のご様子とはうって変わられて、それは嬉しそうに表情を崩される。


「女となってだ。女体を知らねば初夜の儀は致されん」


「女とならずとも……」


 今上帝様は、はにかむようなご様子で、たわわな乳房を意にも返されずに、露わにされっぱなしの神楽の君様を引き寄せられた。


「私はあなた様ならば……いいのでございます」


 かいなくるめて、胸の中に埋められた。

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