第72話
「私はかのお方様をお慕い申しておるのだ。どんなに似ておろうとそなたではない。……いくら受け入れて頂く事が叶わぬからと、瓜ふたつのそなたに逃げて何といたそう……今はそれで気持ちが癒されようが、直ぐに悔いる事となる……私はかのお方様の
「お兄君様とは、御子様を儲ける事は叶いませぬ」
「……何をそなた?」
「ならばお諦めなさいませ。主上様は親王様を儲けるが役目にございます」
「その様な事百も存じておる……存じておるが……」
「主上様。ならばお役目を、お果たしなさいませ。それが定めでございます」
「それでも私は、お兄君様を恋うておるのだ。恋い焦がれておるのだ。そなたではない!」
「はー!グダグタと幼稚な事を申される。私と一夜を伴にいたし、綺麗さっぱりと諦めなされませ」
「そなた巫女の分際で……」
主上様はカッとお怒りになられて、巫女神楽の君様を捩伏せられた。
「そなた如きが物申すでない」
睨め付けられて顎を押しやり、それはそれは巫女神楽の君様を、食い入る様に見つめられる。
「そなたは真によう似ておる……」
さもお辛そうに言われる。
「似ておりますれば、一夜のお相手によろしゅうございましょう?」
「……だが違う……お兄君様は巫女ではない。女ではない……」
苦渋の表情をお浮かべになられ、強く巫女の肩を握るお力をお緩めになられた。
そして御身をお引きになられて、横たわる巫女を凝視された。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます