第71話

「そなた……」


「今宵手解きいたす者にございます」


 巫女神楽の君様は、妖艶なほくそ笑みを浮かべたまま、今上帝様がお座す御帳台に滑り入られ、なんともいえぬ艶を放って、今上帝様の傍らに座され、ゆったりとその白く細いおよびを、寝間着越しの胸元に這わされた。


「……そなた、真に?」


「はい……」


 這わされた指は、今上帝様の左の胸元をクルクルと弄る。

 今上帝様はその妖艶で甘美な動きに、陶酔の色をお見せになられ始めた。


「主上様、ここが心の臓にございます……」


 耳元に唇を寄せてお囁きになられると、今上帝様は吸い込まれる様に、巫女神楽の君様に身をお委ねになられ、なすがままに寝間着をはだけさすをお許しになられる。なおも巫女神楽の君様は執拗に、今上帝様の左の胸元を弄り続けられる。

 今上帝様は大きな吐息をお漏らしになられ、巫女神楽の君様の首筋に唇をお付けになられた。


「主上様……私の衣もお剥ぎくださいませ……」


 甘美な声音に今上帝様は、上気を放って袴に手をかけられ、スルリと紐をお引きになられた。すると袴がサラリと抜け落ちる。

 そのまま衣に手をやりおはぎになられると、透ける程の白い肌が浮かんで今上帝様をお誘いする。

 形良く膨よかな左乳房が、今上帝様の左の胸に押し当てられ、それを確認した巫女神楽の君様は、真後ろの背中に手を置いて、何やら呪文 を唱え様とされた刹那、ポンと今上帝様に躰を弾かれてしまわれた。


「ならぬ、為らぬ、成らぬ……」


 今上帝様は、大きくお首をお振りになられて言われた。


「そなたはまこと酷似しておる……。かのお方様と見まごうた程である……だが、そなたはかのお方様では無い。そなたは私がお慕いいたす、かのお方様ではないのだ!」


 悲痛な表情をお浮かべになられて、それは切なげに苦しげに言われた。

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