第65話

 琴晴は己の判断に、疑いを持ってはいない。

 なるべくして成る……。なるべくに成る……。

 神楽の君様が選ばられる選択も、もはや決まっている筈だ。

 神楽の君様は、そのつぶらな瞳を琴晴に向けられる。

 日差しに照らされるそのお姿は眩いばかりだ。

 なんとも罪作りなお美しさだろう……。

 そして何故これ程までの美貌で、今生に男としてご誕生なのだろう。

 男ゆえの美しさなのだろうか?女には無い何かが同性を誘う様な気もする。


「……陰陽師……そなたの言う様にいたそう」


 ……ビンゴ……


 琴晴は心中でほくそ笑んだ。

 ……誰が仕向けている?……

 それは不明だが、神楽の君様はご自身の責任では決して無いの終結を、その御身で果たされなければならないのだ。

 媚術が本物か否かは、神楽の君様の神力にかかっている。


 陰陽寮が幾度も占って、そして吉日を決定する。

 その吉日とは、若きご夫婦の相性によるの吉日だ。 それも初夜としての吉日であって、子授かりの吉日とは異なる。

 大概はその吉日は一緒だが、皇后様が未だ幼いので、吉日は先となる。

 それでよいと、瑞獣であらせられるお妃様が仰せなのだから、は間違いないだろう。つまり直ぐには授からない。

 それが意味するものは、高々の琴晴には思い倦ねても解らないだろう。

 只今時点で、若きこの国の今上帝様ご夫婦が、真のご夫婦になられる事が大事なのだ。

 そして一番大事なのは、皇后様との床入り前に今上帝様には、雄としての機能が万全である事を証明して頂かねばならない。

 名実共に今上帝様の血を継がれる御子様が、ご誕生になられるという証を……。

 その役を、巫女に扮した神楽の君様にお勤め頂く。

 媚術をお掛けになられるか、はたまた今上帝様に追い出されるか、はたまた……。

 ここまで思い巡らせて琴晴は、仕掛け人が意図する結果が読み取れない。


 ……何を望まれておいでなのだ……

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