第64話
「巫女?」
「禊ぎの巫女にございます」
「…………」
「我が国の皇家の初夜の儀は、
「それは聞いた」
「それ以前に、主上様には禊ぎをして頂かねばなりません」
「それも聞いた。処女の巫女という建前で、手慣れた巫女に手解きさせるのであろう?」
「さようでございます。主上様は
琴晴は、聞き流しておいでの神楽の君様を直視する。
「神楽の君様は、未だ媚術を施されるおつもりでございますか?」
「陰陽師よ。主上は女体を知らぬのだろう?せめて思う相手と伴に生きて頂きたい。我らには縛りはないが、主上にはありすぎる。せめて皇后とは幸せになって欲しい」
「それが呪術にかけられての、事でございましても?」
「その術が解けぬ術なら、思いは
「……ならば、私に妙案がございます」
琴晴は神楽の君様に身を擦り寄せた。
「その巫女の役を、神楽の君様にして頂けば、呪術は間違いなく施せるかと……」
「…………」
「神力も神使などとは、比べ物になられぬはず……如何でございます?」
「私が術を施すのか?」
「はい……」
「女となってか?」
「はい……」
神楽の君様は暫く考え込まれた。
琴晴とて、神楽の君様が巫女の格好をしたからといって、一糸纏わぬ状況となればバレる事は承知だ、承知だが今上帝様は神楽の君様を、思い患っておられるのだから、神楽の君様がお相手と知れば喜ばれるか、それとも膨らみのないお躰に失望を覚え、皇后様に興味を持たれるか。
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