第五巻
第59話
さてさて……実に純朴無垢な神楽の君様であられる。
琴晴はとにかく感嘆したりの、神楽の君様のお姿を見つめる。
今時の姫君様とて、より高貴な官位の夫を得て、絶対逃さずに正妻の座につこうと、それは恋愛する以前から、母や乳母から手解きを受けているから、この手の絵を知っている姫は多い。
男は移り気だから、どんどん上玉へと乗り換えかねない。だから自分に縛り付け逃れられなくして、確固たる正妻の地位に居座り続ける為の努力は涙ぐましい。男を
ならば
いくら世俗とかけ離れてお暮らしとはいえ……瑞獣の血をひくとはいえ……お美し過ぎるとはいえ……。
こんな……媚術だかなんだか知らないが、高々の陰陽師すらも
「……では、それなりの巫女を探させます」
「術を掛け得るものはおるか?」
「女神使を探さねばなりませぬな……」
二人の深刻な様子に、首尾よく事が至ったら銀悌にしかと教えてやらねば……と琴晴は思う程だが、今はそれを教授してやるわけにはいかない……そんな気がする。
「……して、主上様に初夜の儀を終えて頂くので?」
「ああ……一石二鳥だろ?」
「はっ?」
琴晴は再び神楽の君様が、〝媚術〟について自分とは違う解釈をしている事に気がついた。
「媚術とは……」
……つまりあの行為の時に、それなり以上に、その気にさせるヤツですよね?……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます