第四巻
第43話
陰陽寮の陰陽師安倍琴晴は、それは物凄ーく物凄ーく悩んでいる。
事ある毎に支障を来す、今上帝様と皇后様の初夜の儀。
皇后様は摂政家の姫君様だが、そこから支障を来しているとしか思えない。
摂政様は、この国随一と言っても過言では無い程に、宮中の女のみならず人気のあるお方で、当然の事ながら数多の女房に手を付けているにも関わらず、どういう訳か今上帝様と釣り合う、お年頃の姫君様がおいでにならなかった。
高貴な身のお方の定めか、御子様方は高貴な家に縁を結んでしまっているから、今上帝様の皇后様に立てるのに、なんとご誕生を待ちわびて入内させるに近い浅ましさだった。
そして今上帝様すら幼いお年であられたから、哀れすぎる入内としか言いようがなく、そんなこんなの事情を鑑みて、再三陰陽寮としては皇后様の入内は早すぎると反対したが、ガンとしてお聞き届け無い摂政様に押し切られた感は半端ない。
それと驚くべきは、かの上皇様のお妃様であられ、それは尊き大神様よりの賜りものであられるかのお方が、摂政様の愛娘の入宮に賛同された事だ。
これには殿上人も公卿も吃驚だった。
名実共に先の帝にとって、最もご寵愛なる親王様をお産みになられたお方が、跡継ぎ問題にはあっさりと皇子様に身を引かせ、摂政様の妹君様がお産みの今上帝様に帝位を譲り、上皇様とさっさと後院に赴かれた。その身の処し方は見事で、大の男である琴晴ですら感服したものだし、摂政様に爪の垢でも煎じて飲ませたいくらいだった。
その様な謂れあるお方が摂政様に肩入れされるなど、高貴な身分でありながら下世話な考えしか持ち得ない貴族方には理解しがたい事であった。
そんな経緯ゆえに、今上帝様と皇后様のお二人が、お年頃になられたからと言って
「さあどうぞ」
みたいに、交わり合いなどあろうはずがない。
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