第27話

「だが妃よ。私は縁睦ゆかりむつびなるものは好ましくない。貴き身分の一族には、そのような伝統があるのだが、私は好ましく思うてはおらんのだ」


「何をたわいもない。貴方様は私をお選びなのですもの、当然の事と存じます。されども蒼輝は、朱に魅せられておるのでございます。もはや囚われておるのです。他に気が行かぬは貴方様もご承知のはず?高々の近親婚など、蒼の事を思わば、容易きことではございませぬか?私どもの時の様に皇后に子を授け、治世を守らねばなりませぬ。そう摂政は望んでおりますゆえ、事は上手く運びましょう」


 上皇様はホッと息をお吐きになられた。

 兎にも角にもこと情に関しては、それは愛おしいが些か厄介だ。

 見目も麗しいが性格も一途で、そして優しく欠点を見つける事が難しい程だが、独占欲といったら半端では無い。


 上皇様は多情体質では無いが、お妃様が大神様より遣わされない頃は、それなりの女御様がおいでになられた。特別野心とか権力欲とかは無い性格だから、今の摂政の世が安泰なら、特別権力者の娘を后妃とし、実権を強大にしようとも思われない。

 だからお妃様が遣わされてからは、只々愛しいお妃様と仲睦まじく、蜜月の日々を過ごせれば満足だ。

 それが妃一族の魅力か、力なのかは分からないが、ただただ惹かれて囚われてしまった。


 よくよく考えればこの性格でよかった。

 大神様からの授かりものを邪険に扱えば、平安の治世の祝いとして寄越して下されたが、乱世にもなりかねなかった。


 そして、妃の言うがままに、皇后に授けた今上帝が、あろう事か、瑞獣である妃が産んだ兄、朱麗じゅれいに恋をしてしまうとは……。それも恋煩いで寝込む程に……。

 なんとも、我が血を最も受けし今上帝である。


 上皇様が懸念されるのはただ一つ、今上帝様の思いは御身の様に、一途で思いが深かろうという事だ。

 つまりは、どの様な事があろうと、蒼も朱を思い続けるであろうと言う事で、これには上皇様も我が血をお悩みになられた。

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