第26話
「朱よ。我が主人たる大神様は、天がお決めになられてご誕生なさる、それは尊き大神様であらせられます。ご誕生の砌より大神様なのです。そして大神としてご誕生ゆえに、恋情というものをお持ちになられない独神であられるが、神々様方は違う。人間との間にも御子をお授けです。……そなたは、
「……母君様、なぜそれ程に蒼をお思いで?……私に暫しのご猶予をお与えください。どうかそれまで、私が女になりうる事はお伏せくださいませ……」
「あれは上皇様によく似ておるゆえに、可愛いのです。緩りと考えるがよろしかろう……ですが、今上帝の思いが溢れ出ませぬ内に、お覚悟をお決めなさいますように……」
神楽の君様は重々しく頷かれると、上皇様に視線を向けられて静かに頭を下げられて、上皇様とお妃様の御前を下がられた。
「妃よ……そなた達の事には、私は口を挟むものではないのは知っておるのだが、余りにも朱が哀れではないのか?」
「何を申されます上皇様」
最もご寵愛のお妃様のお産みになられた、最も愛おしい御子様であられる神楽の君様を、哀れに思われて上皇様はお妃様に言わずにはおられない。
「朱はこの様な感情に疎いのです。大神様に寵愛頂き、誕生と共に〝神〟の名を頂いた子でございます。屋敷に数多の美女を差し向けようと、全く気に留めもせずに突き返す様なのに、その様なあれが、何故か蒼には心を与えておるではございませぬか?兄と言う名を盾に、それは大事にしておるではありませぬか?夜半に馳せ参じて蒼の側に寄ったではございませんか?それがあれの思いでございます」
「だが妃よ」
上皇様は、渋い顔をお作りになられて言われた。
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