第11話

「如何致されますか?」


「うーん?如何なご様子であるのだ?」


 銀悌に視線をお送りだった神楽の君様は、目眩を起こしそうな晨羅に視線を移されて聞かれた。

 その視線に一瞬にして我に返った晨羅は、畏まって主上様のご様子を、知りうる限り申し述べる。

 すると神楽の君様は、微かに眉間に皺を寄せられた。


「陰陽寮が解らぬとは……摩訶不思議」


 そう言われるが早いか


「銀悌よ、適当に見繕って着替えを……」


 とお申し付けになられた。


「はっ?これから行かれますか?」


「そういたそう。どの道これからが、其方達の活躍の時であろう?」


「畏れながら、私は違います。そこの白はそうでございますが……」


「ほう?神使同士でも違うか?」


「我が一族は、白鼻のものとは違います。お忘れのなき様……」


「ははは……些細な事を気にいたす」


 神楽の君様は、それは豪快に笑れるが。その声音すらも心地良い、少し大き目の鈴の様だ。


「違うものは違うのです」


「銀悌よ、私など人間でも気に致さぬし、あやかしと言われても気に致さぬぞ」


「……貴方様は〝神〟であらせられる事を、お忘れなき様に……」


「神?」


 神楽の君様は、したり顔の銀悌を直視されて微笑まれる。


「そなた同様、神の端くれと言う処であるが、私は神になりきれぬでき損ないよ」


「何を……先は神となられるお方にございます。お忘れなき様……」


「そなたと一緒であるな」


「私は眷属神の一族ゆえ、主人たる大神様のお許しを頂きましたら、眷属神となる身にございます。しかしながら、貴方様はもはや大神様より、そのお約束を頂いておいでの尊きお方にございます。もしも貴方様がたった今し方お望みになられれば、即座に神となられるお方にございます。どうかその事を決してお忘れ無き様に……」


 銀悌は至極神妙に畏まって申し述べる。


 神楽の君様は、それは美しく破顔を作られて、悪戯なお顔を銀悌に向けておられる。

 お分かりである事を、ただ銀悌を揶揄わられるだけに言われたのだ。

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