第3話
主上様の乳兄弟の晨羅が、摂政様のご命で神楽の君様の下に参じている間に、主上様の母君様であられる皇太后様のご命で、陰陽寮の陰陽師が再び、ご寝所の主上様をご覧になられている。
容易くお側に寄る事など許されぬが、今宵は違う。我が子をご心配の皇太后様がお許しくだされている。
東枕に立てた御帳台に横たわられる主上様を、帳を上げてジッと見つめられた陰陽師は、大きく眉間を寄せて祝詞を唱えた。
その滔々と流れる声音を、
パシパシと大きな音がしたかと思うと、
すると中から姿を現した陰陽師を認められて、徐ろに平静を取り戻されて腰輿の中に身を隠された。
「い、如何致した?」
お付きの長女が、畏まる陰陽師に声をかける。
「……妖の精が、主上様に
「妖の精とな?」
「主上様の夢の御中に在りて、主上様を取り込もうと致しております」
その言葉を聞いた長女は、腰輿の中の皇太后様に視線を向けた。
「……
腰輿の中から吐き捨てる様なお声が、苦々しく絞り出される様に聞こえる。
「……如何致せばよい?」
長女は畏まる陰陽師に問う。
「まだ然程力のあるものでは、ございませぬゆえ……」
「其方に仕留められるか?」
腰輿の中のお方は、急く様に御自らお声をかけられる。
「はっ……」
「……ならば
「はっ……」
陰陽師は深々と頭を垂れると、腰輿が去る姿を見送った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます