第2話
晨羅は急いで、神楽の君様のお屋敷へ馳せ参じる。
魑魅魍魎が
母は宮廷の女官であったが、父が見初めて通いつめて晨羅が産まれた。
里に下がって晨羅を育てていたが、主上様がご誕生になられたので、溢れる程に乳の出る母が、まだ左大臣と呼ばれておいでの、摂政様の元に乳母として上がった。
母が左大臣様の妹君の御子様の乳母となり、そのお方が皇太子、帝となられたので、父は破格の出世を果たし近衞大将となったのだが、父の弓の腕前はこの中津國で右に出る者はいない程で、その父の血を引く晨羅の弓の腕前は、父をも凌ぐと自負する程だ。
無論、今上帝様の乳母となった母も、女官では高い位を頂いている。
父には幾人かの妻がいる様だが、幼い頃より宮中に身を置く晨羅は兄弟を知らない。
ただ近衞府に身を置く兄とはよく顔を合わせるから、弓の腕前だけでいうならば、その兄よりも上である。
年の離れた、兄本人が言ったのだから間違いはない。
そんな自信があるから、夜更けに人里離れたお屋敷迄、一人で訪れるなど心許無い処だが、晨羅は全くその様な事は気にも留めてはいない。
月が見え隠れする今宵は、薄っすらと気味が悪く、それにも増して都から遠く離れた、それは辺鄙な所に建つ神楽の君様のお屋敷は、もっと薄気味悪い風情を漂わせている。
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