弟帝様ご惑乱
婭麟
弟帝様ご惑乱
第一巻
第1話
此処、
そして早くから入宮されておいでの皇后様が、そろそろお年頃となられ、ご寝所に召される事と相成ったのだが、何故か突如として主上様がお倒れになられてしまった。
晨羅は急いで後院の門を叩くと、上皇様はお妃様を伴われて、神山の一つである霊山に行かれているという。
さても困ってしまった晨羅は、霊山よりも近くにお住まいの、主上様の兄君様であられる、神楽の君様の元に馳せ参ずる事とした。
神楽の君様は、上皇様が最もご寵愛されしお妃様の、ただお一人の皇子様で、諸々のご事情がお有りになられて、世間とは一切の関わりを断たれてお過ごしになられている、それは尊くもお美しく、そしてそれはそれは不思議なものをお持ちの、下衆の晨羅が云うには憚られるが、すこぶるお変わり者でいらっしゃる。
御子様方は、お母君様の元でお育ちになられる。つまり母君様のご実家で成長されるので、お互いにお顔を知らずにお育ちになられる事が多い。
特に主上様は摂政様の元で大きくおなりで、神楽の君様とは入れ違いに宮廷にお入りになられた。
神楽の君様はご実家のおありにならない、お妃様の元でお育ちになられたが、上皇様が後院に赴かれた折に共に赴かれ、その後都の端にお屋敷を構えられ、ほとんど世俗とは関わらずにおいでであられたので、一年か二年程前に後院で偶然お会いになられる迄、今上帝様とはお顔を知る術もお持ちではなかったが、そのご縁で主上様は、お兄君様の神楽の君様と交流を持たれる事となった。
……といっても、一方的に主上様がお兄君様を慕っているだけの事なのだが、さすがにこの国の帝であられ弟君であられるから、かなり偏屈だとお噂の神楽の君様と云えども、そんなに今上帝様につれなくされる事は無い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます