世界

雅さんの居住区

第1話

物心ついた頃には光の中にいた。

辺りは一面真っ白で、なにもなかった。

歩いた。いつか見つかると信じた終わりの見えないゴールを求めて。そもそもゴールの先になにがあるのかなんて、考えてもいなかったが。

食欲もなければ疲労感もない。本当に、なにもない世界だった。

歩いて、転んで、痛みを感じないのに何の不信感も持たずに、もういいやって地べたに座り込んで目を閉じた。

ゴールはなかった。いや、もしかしたらあったのかもしれない。ただ、いつまで経っても見つけられずに、なんだか面倒くさくなって諦めた。


目を開けた先に飛び込んできたのは、見慣れない風景だった。

動く金属物が大きな音を上げて、僕を避けながら通り過ぎていく。

僕と同じ形をした生物がこちらを見ている。彼らの目は僕に向いていて、皆、異形なものを見る目でこちらを見ている。

不思議に思って彼らを見つめていると、横から強い衝撃を受けた。

吹き飛ばされた。痛かった。痛くて痛くてたまらなかった。どうかこの痛みを和らげてほしかった。

だけど、僕を吹き飛ばした金属物はどこかに行ってしまった。生物たちは皆、薄い長方形の物体を僕に向けて、満足げな顔をして通り過ぎてゆく。

いろんなもので溢れていた。だが、この世界は愛が無かった。

なんだか眠気が襲ってきた。今までの、いろんなことを思い出しながら眠るのは初めての体験だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

世界 雅さんの居住区 @miyabisannokyozyuuku

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る