第6話 新入部員

 整列した部員を前に、理事長は偉そうにふんぞり返る。動くたびにぶるぶる揺れるぜい肉が見苦しい上、風向きによっては、その異常なまでに臭い体臭が漂い、ハキ気がする。


「今年度は期待の新入生も加わった事だし、昨年の様な事はねーとワシは考えている。どうだ、尿三? ん、尿三はどーした?」

「あ、いえ、今日はまだグランドに、き、来ていませんが」

「あいつ、またズル休みか! まったく何やってやがんだ。まーいい。バイスキャプテン、今年の目標とは何だ、答えてみれや」

「ハ、ハイ! コウシエンです!」


 答えたのはイケメン金髪先輩。バイスキャプテンなのか。


「そう、その通り。そのためにワシは、この四人を我が汚泥学園に招いたのだ。よし、おみーら、バチッと挨拶をしろい」


「ほいじゃ、ウチから。ウチは〈南の炎鬼〉の名を継ぐ鬼南煌火、ポジションはピッチャー。ウチの球は誰にも打たれんけぇ、先輩方は後ろで遊んでくれちょてえぇですけぇ。あと、先輩とはいえ、舐めたプレーするモンに、ウチは容赦せんけぇ、そこは覚悟しとってつかーさい!」


 コウカは胸を張って答える。マジかっ! 選手なの、この子? しかもピッチャー?


「アタシは大牙八裂。正統なる人狼にして最強の人狼。足には自信あるよ、あともちろん牙にもな。敵の喉、早く切り裂きたくてウズウズするぜ。ポジションは、ま、外野かな」


 下手すると185cmあるオレよりもデカイが、こいつもどうやら女子みたいだ。猫耳みたいのを付けたふざけたヤツだが、喉を切り裂く? ワケわからない。


「おい、どうした鬼東、おめーの番だぞ?」

「あ、はい。自分は木藤雷児。ポジションはピッチャーです。しっかりと練習をし、チームのためになりたいと思います。よろしくお願いします」


 新入部員は四人と言っていたけど、もう一人の姿が見えない。どうしたんだろう?


「あいつはまだこねーのか?」

「あ、来ました。今、こっちに向ってるみたいです」


 バイスキャプテンの指さす方を見て、オレは首を傾げた。

 どう見ても、校舎の二階よりも大きな物体が、ゆっくりとこちらに向かっているのだ。その姿は人間にも見えるが、そのサイズたるや……。

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