Q. 日本語から漢字を抜けば偽中国語なんて簡単に作れるでしょ?

A. そうでもないんですよ、これが。


 日本人の方は結構誤解していらっしゃるようだが、日本語の漢字と中国語の漢字というのは様々な点で差異がある。


①字形の問題 常用漢字と簡体字

 

 言うまでもないが日本語と中国語では字の形が大きく異なる字も多い。お互いに独自の方式で字体の簡略化を行ったからである。

 例えば「専門」は簡体字では「专门」だが、中国語を全く勉強したことがない日本人はおそらく最初の「专」という字が読めないだろう。


②使っている漢字自体が割と違う


 いくつか具体的な例を挙げる。

 中国語(普通话) ⇔ 日本語


 吃 = 食

 喝 = 飲

 看 = 見

 去 = 行


 広東語などの方言では「食」、「飲」、「行」あたりは日本語と同じ漢字を使うこともあるので、中国人は右側の漢字を書かれても一応読むことはできるだろう。

 しかし「畑」や「込」のような日本語では頻出する国字(日本で作られた字)も中国人にとっては読めないだろうし、逆に日本人にとっては「甩(振り回す)」、「乖(聞き分けがよい)」などの漢字を見ても全く意味が分からないこともあるだろう。


③漢字で書かれた和語や和製漢語は中国語ではない


 日本人の皆さんなら「立入禁止」という標識を見たときに何の意味かすぐに分かると思うが、ほとんどの中国人にとってこの「立入」というのはそれだけでは何の意味か分かるまい。

 当たり前だが、元々和語でしかない「たちいり」を漢字表記して「立入」と書いたところでそれは中国語ではない。

 日本語には「正直」や「返事」、「大根」などと言った和製漢語がたくさんある。この辺、最近中国語に逆輸入されたおかげで多少は通じるようになったものの、依然として通じないものも多い。

 ただ単に仮名を抜いて「君大丈夫?」とか「大変面白」とか書いても日本語が全く分からない中国人であれば読めない。(偽中国語ブームにより「君本当中国語上手」などのネットスラングが広まったおかげで、これぐらい簡単なものなら分かるかも笑)


④文法が違う


 日本語はSOV、中国語はSVO言語である。


 私は肉を食べる。

 主語 目的語 動詞


 我吃肉

 主語 動詞 目的語


 例えば「我上海蟹大好(『私は上海蟹が大好き』と言いたい)」とか書いたところで、中国語しか話せない中国人にとっては「好」は「良い」という意味なので「私の上海蟹はすごくいい」という意味だと誤解される恐れもある。


 先ほどの「立入禁止」は中国語では「禁止进入」とか「请勿进入」のように「進入」の前に「禁止する」という動詞を持ってこないといけない。英語ともっと近いかもしれない。

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