第18話 アーンと間接キス2
「はい、みいちゃんアーン」
「みすずっち、はいアーン」
「いや、これどういう状況!?」
今、私はシロ先輩とむっちゃんのふたりからスプーンを口元に差し出されている。
ことの発端はシロ先輩が私にアーンしている様子の写真をむっちゃんに送ったこと。それに対抗しようとむっちゃんがカフェに飛び込んできたのだ。
「いや、むっちゃん部活は?」
「サボってきた!」
それアカンでしょ。
「いいんだよ。ボクにとっては部活なんかよりみすずっちの方が何倍も大事さ」
うーん。そう言ってもらえるのは正直うれしいんだけど、むっちゃんは仮にも陸上部のエース。陸上部の方たちに本当に申し訳なく思う。
「みすずっちが気にする必要はないよ。明日ボクがみんなに謝ればいいだけの話だからね。それよりほら、アーン」
むっちゃんがぐいぐいと私にスプーンを押し付けてくるので、しょうがなく私はパクっとスプーンを口に含む。
そして私の口の中に入ったスプーンでむっちゃんはパフェをそのままパクリ。
「うーん、みすずっちのパフェは格別だね!」
「ちょっと、それ変な意味に聞こえちゃうから」
「みいちゃん。今度は私のを」
「はいはい」
それにしてもすっかりアーンに慣れちゃったなあ。最初はあんなに恥ずかしかったのに、今では平然とした顔でスプーンをくわえることができる。これは果たしていいことなのだろうか?
「そう言われてみると確かにマンネリ化してきた感はあるわね。なら少し趣向を変えてみましょうか」
と言うとシロ先輩は目をつむり、唇を前に突き出した。
えっ、キスしろってこと!?
突然のことに戸惑う私。
「白美ぃ。どういうつもりなのかな?」
むっちゃんが怒った声を出す。
「どういうつもりもなにも、みいちゃんにアーンしてもらおうと思って」
あ、なるほどね。ってまぎらわしいわ!
「みすずっち。顔真っ赤だよ? 確かに今の白美の顔はエロかったけどさぁ。ま、いいや。それならボクにもしてもらおうかな」
そう言って今度はむっちゃんが目をつむり唇を前に突き出す。
え、なにこの状況。正直ふたりがエロすぎて直視できないんですけど。
「「早く、早く」」
そしてこんなときだけ息がぴったりだもんなぁ。
ええい、ままよ!
私はふたりの顔を直接見ないようにしつつ、両手にスプーンを持ち、パフェをすくってふたりの口に突っ込んだ。
「ん~おいしい」
「みいちゃんのアーンで食べるパフェはまた格別ね」
幸せそうな顔で口を動かすむっちゃんとシロ先輩を見てると、先ほど感じた精神的な疲れがどこかに飛んでいったような気がした。
こうして私たちはお互いにパフェを食べさせ合いながら時間をつぶしたのだった。
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